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2016/08/31 尿定性検査の解釈

尿検査というのは、比較的簡便であるから、臨床医療でしばしば行われる。 この時、解釈を巡って問題になることがあるのが「細菌尿」である。

金原出版『臨床検査法提要』改訂第 34 版によれば、尿沈渣の検鏡所見として、強拡大で毎視野 5 個以上の細菌がみられるものを有意の細菌尿とする。 健常者では、通常、尿中に細菌は存在しないので、細菌尿は異常所見である。 ただし、これが直ちに治療を要する病的な尿路感染症の存在を意味するわけではない。 研修医向けのマニュアル本などでは、試験紙法による亜硝酸塩試験で陰性の場合には基本的に尿路感染症ではない、と記述されていることが多いのではないかと思われる。

一方、『臨床検査法提要』では、細菌培養をゴールドスタンダードとした場合、亜硝酸塩試験の陽性反応的中率は 85 %, 感度は 80 % 程度であるという。 偽陰性がそれなりに多いことから、亜硝酸塩試験陰性を根拠に尿路感染症を否定することは危険である、と言わざるを得ない。 また医学書院『臨床検査データブック 2015-2016』でも、亜硝酸還元酵素を欠く細菌への感染の場合や、 尿が膀胱内に貯留していた時間が短い場合などには、偽陰性になるため注意を要する、としている。 従って、原因不明の発熱がある場合などは、亜硝酸塩試験を根拠に尿路感染症を否定するわけにはいかない。

一体、一部のマニュアル本などで亜硝酸塩試験を重視している根拠は、何なのだろうか。


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