これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/08/25 英才か、落ちこぼれか

現状では、地縁や血縁でもない限り、名古屋大学を卒業して北陸医大 (仮) に研修医として就職するというのは、あまり一般的ではないようである。 北陸医大の人々は自己評価が低いようで、私が「北陸医大が素晴らしい大学だと思ったから、ここに来たのです」と言っても、なかなか信じてもらえない。 そうした状況では、「名大のエース級の卒業生が北陸医大を選んで来た」などと考えるのは不自然であり、 「名大の落ちこぼれが、東海地方から逃げて北陸の田舎大学に流れて来た」と解釈するのが常識的である。 実際、救急やら外科やらでは、私は、そういう目で見られていたのではないかと思う。 それはそれで構わないし、むしろ、そういう扱いをされた方が、私としては動きやすい。

私が優秀なのか落ちこぼれなのか、ということについては、私自身が、一番よく理解している。 ついでにいえば、私のような人間を適切に評価している人が世の中には一定数、存在するのであって、敢えてそれを表明しないだけだということも、今では理解している。 大学院時代の私は、そのあたりのことがわかっていなかったから、自信を失い、迷走したが、同じ轍は二度と踏まぬ。 この件について、大学院を辞める際に某教授から言われた言葉は、その後の私にとって、大きな支えになっている。

私自身はそれで良いのだが、問題は、周囲の学生や研修医である。 試験の点数だとか、国家試験的、教科書的、あるいはマニュアル的な知識の量だとかいう、わかりやすい指標に支えられなければ不安になる若者は多いようである。 残念なことに、北陸医大では、そういう安直な物差しで学生を評価する教員が多いものと思われる。 本当は、北陸医大には素養のある学生が多いのに、正当な評価を受けていないのである。 もちろん、名古屋大学にも程度の低い教員はいたが、それ以上に、学生に高い志を植えつけようとしている教員が多かった。 このあたりが、現時点における、名古屋大学と北陸医大の格の違いであると言わざるを得ない。

誤解されると困るので明言しておくが、私は、名古屋大学の方が北陸医大より良い、などと言っているのではない。 現状の名大と北陸医大の差は、その程度の些末なものに過ぎない、と言っているのである。 我々の心掛け一つ、志の持ちよう一つで、すぐにでも逆転できる程度でしかない。 むしろ、名門の看板に胡座をかいている名大などに比べれば、北陸医大の方が、よほど将来性に富んでいるといえよう。 我々こそが今後の日本の医学の先端を担うのだ、という気概を持つべきである。


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