これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
私は原子力村の出身であるから、放射線障害から身を守る術について、放射線科医以外の一般的な臨床医よりは、よく理解していると思う。 先月、私は救急研修を受けたのであるが、個人線量計が 0.2 mSv の被曝を記録した。 放射線を浴びるような行為といえば、不穏の患者の CT 撮影に際して、暴れないよう、撮影室内で押さえていたことが何度かある。 たぶん、その時の被曝であろう。 今月は X 線透視下での診療に何度か加わっているので、また、少々被曝しているかもしれぬ。
指導医の中には、個人線量計を着用せずに診療に臨む者もいる。 というのも、一定量以上の被曝をしてしまうと、なぜ被曝したのかについて面倒な書類を提出せねばならず、その一方で、 被曝したことに対して支給される手当は、微々たる金額に過ぎないからである。 こうした事情をふまえて、診療にあたり、各人の判断で個人線量計を外しておくこと自体は違法ではない。 しかし、 放射線障害防止法第 20 条では、個人線量計を着用させることを許可届出使用者、つまり病院等の義務として定めている。 すなわち、個人線量計なしの診療行為を黙認することは、病院による不法行為にあたる。
医療関係者の中には、放射線被曝について、いささか無頓着な者が少なくないように思われる。 これは、あまり良い風潮ではないし、なにより、愛する北陸医大が不法行為に染まる様をみるのは忍びない。 近いうちに、病院当局に対して然るべき申し立てをしようと思う。
なお、医師が放射線防護に無頓着なのは全国的な風潮であり、北陸医大特有の問題ではないので、その点は、誤解されないよう。