これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/08/21 吃音症

医学書院『医学大辞典』第 2 版によれば、「吃音症」とは 「音や音節の反復, 音の延長, 間投詞の投入, 単語が途切れること, 会話の休止などで会話の流暢さと時間的流れが損なわれる状態」のことをいう。 有病率は 1 % 弱であるらしく、私も吃音症を患っている。 とはいえ、日常生活に著しい障害を来す程ではない、軽いものであるので、特に医学的介入を受けたことはない。

吃音症の表現型は多様であるが、私の場合は、やや精神的に緊張した場合に、発語困難になるものであり、まぁ、典型的な部類であろう。 たとえば、回転寿司店で「ノドグロをください」と言おうとした際に「ノ、ノ、ノ、ノドグロ」となったり、あるいはそもそも「ノドグロ」が発音できずに 不明瞭な発声になってしまうのである。 これは、幼少の頃から続いており、齢 30 を過ぎた現在でも、治る気配がない。

そんな様では、学会発表などは大変ではないか、と心配される方もいるかもしれないが、実は学術発表の場で吃音に苦しんだことはない。 というのも、発表の場にあっては、その内容について、その場にいる誰よりも私が一番よく理解している。 「この内容について、あなた方はよく知らないだろうから、私が教えてさしあげましょう」ぐらいのつもりで話すわけだから、それほど緊張はしないのである。

冒頭でも書いたが、周囲の理解に恵まれていることもあり、特に日常生活において吃音で苦労することはない。 しかし医学部入学以後には、吃音をからかう、あるいは冷やかすようなことを言われたことは、何度かある。 いまさら、そうした無神経な言葉によって深く傷つくことはないが、極めて不愉快であることには違いなく、当然、良好な人間関係の形成の障害にはなった。

不思議なことであるが、医学を修め、医療に従事しようとする人こそ、そうした身体や精神の繊細な問題について、配慮に乏しいのではないかと感じられる。


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