これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
昨日の記事を読んで、中には「おや、この人、ちょっと疲れているんじゃないか」と思った人もいるだろう。 あるいは、「こいつ、馬鹿じゃないのか」などと思われたかもしれない。
胆汁中に含まれるビリルビンの大半は、抱合型ビリルビンである。 抱合型ビリルビンは、基本的には、腸管から吸収されることはない。 従って、胆汁を経口摂取したからといって、血中ビリルビン濃度に大きな変化は生じないように思われる。 私が昨日書いた記事では、この点に言及していなかったので、なんだかトンチンカンなことを述べているように思われた方もいるだろう。
正直にいえば、実際、その点については、あまり深くは考えていなかった。 そこで、半ば後付けであるが、補足しよう。 腸管内に分泌された抱合型ビリルビンの一部は、詳細はよくわからないが、腸内細菌の作用によりウロビリノーゲンに変換される。 ウロビリノーゲンは腸管から吸収されて血中に移行する。 J. E. Hall, Guyton and Hall Textbook of Medical Physiology, 13th Ed. (2016). によれば、 だいたいウロビリノーゲンの 95 % 程度は腸管内に再び分泌される一方、5 % 程度は尿中に排泄されるという。 従って、血中ウロビリノーゲン濃度は、肝臓周辺の様々な臓器の障害によって変化するが、単独では診断に役立てることは難しい。
さて、ウロビリノーゲンを肝細胞から胆汁中に排泄する分子が何であるかはよく知らないが、たぶん、 ビリルビンと同様に ATP-binding casette C2 (ABCC2) などによる能動輸送で排泄されているものと思われる。 その場合、ウロビリノーゲンとビリルビンは競合的に胆汁中に排泄されることになる。 従って、胆汁の経口摂取は、血中ウロビリノーゲンの増加をもたらし、結果的にビリルビンの胆汁中への排泄を阻害する恐れがある。
一応、このように理屈を構築することはできるのだが、昨日の私は少しばかり疲れていたようだという点は、認めざるを得ない。