これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/07/30 救急研修と臨床医療教育

一ヶ月間の救急研修が、明日で終わる。 率直な感想は、二度とやりたくない、というものである。

指導医の中には「何科に進むにせよ、アルバイト等で救急当直もやらねばならないから」などと、基本的な救急対応技術の修得を必須と考える者もいる。 しかしながら、病理医などの場合は、救急当直を行わない場合が多い。 従って、私にとっては救急診療技能の修得自体はあまり重要ではなく、あくまで「救急体験」のような位置付けと認識していた。 だから、本当のことを言うと、私は救急診療のマニュアル的な内容をしっかりとは暗記していないし、救急現場では、まぁ、あまり戦力にはならなかった。

名古屋大学にせよ北陸医大 (仮) にせよ、臨床教育のあり方には、かなり粗末な部分があるように思われる。 とにかく学生や研修医に実践させ、経験によって修得させよう、というのが、現在の日本の臨床医療教育の主流であろう。 そこには、研修で身につけるべき事項のリストはあっても、そもそも何のための研修なのか、目標を達成するための最適な教育方法はどのようなものか、 といった検討が欠如しているように思われる。 結果として、学生や研修医は「やり方を覚える」ことに徹するようになるのだが、はたして、それが本当に適切な医学教育なのか。

たとえば医学の教科書を探そうとしても、日本語の書物はマニュアル本やアンチョコ本の類が豊富な一方で、重厚な医学専門書は極端に乏しい。 まっとうな専門的教科書が欲しければ、英語で書かれたものを買わざるを得ないのである。 どうやら、日本のセンセイ方は、キチンとした教科書を書かない、書けないらしい。 臨床と研究はできても、教育をできる医者は稀なのが、日本の多くの医学部の現状なのだと思われる。

2016.09.02 誤字修正

戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional