これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/12/18 従順な医師 (1)

過日、北陸医大 (仮) 附属病院の全職員を対象として、インフォームド・コンセントの重要性を説く講演会が開催された。 これは、特に死亡事例に関連して、我々医療従事者側の身を守る手段としての、インフォームド・コンセントに重点を置いた内容であった。 もちろん、私は最前列中央の席を占めたわけだが、周囲には他の研修医の姿はみられなかった。 後で知ったところによれば、どうやら後方の座席に若干名の研修医がいたらしいが、それでも、院内に 30 名程度いるはずの研修医のうち、 参加者は 10 名にも満たなかったであろう。 今回と同様の「医療安全推進のための講演会」などは年に数回、実施されており、一定回数の参加は義務付けられているが、全部に参加する必要はない、とされている。 中には、手術などのためにやむなく欠席した者もいたであろうが、たぶん、 興味がなく、既に必要な出席回数は満足しているから今回は出席しない、という者が多かったのではないかと思われる。

こうした講演会に対して興味を持たないという姿勢自体に問題はあるものの、興味がないから出席しない、という態度自体は、 主体的な判断による自主的行動であって、結構である。 ただし、それならば、興味のない講演会に対しては、義務付けられた出席回数に関わらず、欠席すべきである。

我々は、幼稚園児ではない。それどころか、職務上、高度な倫理観を要求される立場の、医師である。 講演会に参加するべきかどうかなど、自分で判断できるはずである。 それを、病院から強制されているから参加する、などとは、一体、どういう了見であるか。

その講演会が自分にとって必要でない、有益でない、と思うのであれば、かかる無駄な講演会への出席を強要する病院当局に対し、断固として抗議・反発するべきである。 抗議が受け入れられなければ、黙って無視する、という静かな抵抗の態度を示すのも良い。 それを貫けば、最終的には懲戒処分を受ける恐れもあるが、この医師不足の時世を鑑みれば、場合によっては、こちらから自主的に退職してしまえば良い。 まともな医師であれば、再就職先に困ることなど、ないはずである。

同じようなことは、職場の忘年会についてもいえる。1 ヶ月ほど前にも書いたが、北陸医大の場合、 診療科ごとの忘年会に、研修医も招聘され、宴会芸の類を披露することが求められる例が多いようである。 もちろん、それをやりたい者は、やれば良いのだが、「やりたくありません」とは言いにくい雰囲気が、ある。

私は、11 月と 12 月の 2 ヶ月間、某内科で研修中であるが、忘年会は欠席する。 静かな食事会程度の忘年会なら参加するつもりであったが、宴会芸の類は、やるのも、みるのも、嫌いだからである。 参加したくないから、参加しない、というだけの話である。 ところが、周囲の研修医の話を聴くと、どうも一般的には、それほど単純な問題ではないらしい。 本当は参加したくないのだが、いずれ大学の「医局」に「入局」するつもりだし、関係を損ねたくないから、というような配慮の下、 不本意ながら参加する、という研修医が稀ではないらしいのである。

言うまでもなく、現代においては「医局」などという組織は公式には存在しないことになっているし、 もちろん「入局」などという制度も存在しないことになっている。 だいたい、忘年会を欠席したぐらいで上級医の機嫌を損ねて居づらくなるぐらいなら、そんな大学や病院は、辞めてしまえば済むだけの話である。


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