これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
私は、京都大学時代には「今の京大の学生は馬鹿ばっかりだ」と言い、名古屋大学時代には「名古屋大学は、腐敗している」と言い、 北陸医大 (仮) に来てからは「教育者としての資質を欠く教授がいる」などと言っている。 その一方で、京都大学、名古屋大学、そして北陸医大に対する愛校心は強い、と自称している。 そうした私の姿勢を、同期研修医の某君は「幻想ばかり追いかけていて、現実を知らない」と揶揄した。
その通りである。私は、栄光の京都帝国大学に思いを馳せ、誇り高き名古屋帝国大学を愛し、 そして、地方大学でありながら世間に迎合せず独自の道を歩む北陸医大に惹かれて、ここに来たのである。 今の北陸医大の人々は、我が大学の建学の精神を忘れ、ただ一地方大学として生き残ることに汲々とし、先人の掲げた理想を、忘却してしまった。 それではいけない、と考える、少数勢力ではあるが改革の志を持つ人々に招かれて、私は北陸医大の研修医として着任したのである。
5 年ほど前、私は北陸医大の学士編入学試験を受け、入学を許可された。 形式としては「入学許可」であるが、実態としては、むしろ北陸医大が私に対し、暗に「あなたのような人材が必要である」と言ったのである。 これは、名誉なことである。 諸般の事情により、私は北陸医大入学を辞退して名古屋に移ったが、結局、北陸医大に帰ってきた。 あたりまえであろう。自分を本当に必要としてくれている場所で働くことを、望まない者が、いるだろうか。 給料だとか、設備や教育環境がどうだとか、大学としてのネームバリューとか、そういったものは、些末な問題に過ぎぬ。
平和に生きようと思えば、他人を否定せず、周囲に同ずることを心掛ければ良い。 それで個人の安寧は保たれようが、しかし、皆がそうすれば、社会は一体、どうなるのか。 本当に世の中をどうこうしようと思うならば、我々は、現実を肯定するわけにはいかない。改革は、否定することから始まるのである。 そうした異端者を受け入れる度量において、北陸医大に勝る大学は、あるまい。