これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/12/5 敬語がおかしい医者

まともに日本語を扱えない医者は、多い。 「白血球が上がる」「ヘモグロビンが下がる」等の意味不明で不適切な表現については 3 年ほど前に書いたので、ここでは繰り返さない。 ただし、こうした表現は不適切だ、という考えを私は現在でも変えておらず、 意識して「白血球が増える」などの表現を用いていることは、ここに宣言しておく。

まともに日本語を使える人にとっては常識であろうが、来客などとの会話の中で自分の上司のことに言及する場合、呼び捨てで謙譲語を使うのが当然である。 たとえば「まもなく山田がまいります」などとするのが正しく、「山田部長がいらっしゃいます」などとするのは不適である。 ところが、医者の中には無教養な者が多いようで、意味不明な敬語もどきを、よく耳にする。

過日、某製薬会社主催の、インターネットを介したセミナーが開催された。 率直な感想としては、インチキな統計を使って、自社製品を実際以上に優良にみせかける、くだらない内容であった。 何やら学問ぶった討論のようなものをしていたようだが、彼らが何を議論しているのか、私には全くわからなかった。 天下の大製薬会社様が、学術的に不適切な議論を公然と放映するはずがないから、たぶん、私の勉強不足なのだろう。

そのセミナーにパネリストとして登場した、東京の某有名病院の医師の敬語は、ひどかった。 自病院について説明する際に、とある診療科について「科長に△△先生が赴任されてから云々」などと言っていたのである。 身内について「先生」などという敬称をつける時点でおかしいし、さらに「赴任される」という尊敬表現を用いるのも、おかしい。 言葉通りに解釈すれば、聴衆に対して「その科長はエラい人だから、崇め奉りなさい」と言っていることになる。 一体、何様のつもりなのか。厚顔無恥と言わざるを得ない。

もちろん、私は患者との会話の中で指導医について言及する際は呼び捨てを基本にしている。 ただし、その指導医のことを患者が「○○先生」と呼んでいる場合には、状況に応じて、私も「○○先生」と呼ぶことはある。 これは、敬語の基本作法からいえば不適なのだが、「私は○○医師よりも、むしろ、あなたの側の人間ですよ」という気持ちを込めた表現であり、 その意味では誤った表現とはいえまい。 私は、全般的なコミュニケーション能力がやや低めなので、患者との関係を築くために、こうした小技を駆使せざるを得ないのである。


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