これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/11/19 医師のための統計学

ここしばらく、医学の専門的な話を日記に書いていない。 これは、私が医学的思考を停止しているからではない。 むしろ、非常に難しくてマニアックな勉強をしているために、なかなかまとまらず、日記に書ける段階に到達していないのである。 近いうちに、巨赤芽球性貧血の深淵について記載する予定であるので、首を長くして待たれるが良い。

さて、本日の話題は、統計学についてである。 現在の医学科教育では、ほとんど統計学が教えられていない。そのため、多くの医師は、統計学を識らない。 これは研修医に限ったことではなく、年長の医師であっても、同じことである。 この問題についての愚痴は、この日記においても、過去に何度も書いた。 しかし愚痴をこぼすばかりでは、世の中は、良くならない。 我々が、この窮状を、何とかしなければならないのである。

統計学のマジメな教科書は、一般の医師にとっては、難しすぎる。 かといって、アンチョコ本では、統計学の初歩すら身につかぬ。 以前に紹介した『今日から使える医療統計』は、なかなかの書物であるが、 初学者がこれを読んで自習する、というのは容易なことではない。 実用的な面にばかり意識が向かってしまい、統計の真髄を見失う恐れもある。

そうした事情もあり、同期研修医の某君と共謀の上、学生や研修医などを対象にした統計入門の勉強会を開催することにした。 これは、和文論文を題材に、統計解析の部分をじっくりと読むことで、統計の考え方、インチキの見破り方を修得しよう、というものである。 題材の論文は、医学的に重要なものでもなければ、立派な統計解析を行っているものでもなく、気軽に読める平易なものを選ぶことにした。 そうした題材論文のインチキ解析をケチョンケチョンに批判してやろう、という算段である。

悩ましいのは、具体的な形式である。 参加者には統計初心者を想定しているから、輪読形式でワイワイとディスカッションする、というわけには、いくまい。 かといって、私か誰かが講義する形式でも、つまらない。 試行錯誤、ということになるだろう。

ともあれ、来週から、統計勉強会を開始する。 一部の勢力からは「また、あいつか。研修医の分際で、でしゃばりやがって、生意気な。」などと思われるであろうが、 一方で一部の指導医からは熱い声援をいただいているので、心強い。


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