これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
北陸医大 (仮) の有志学生と共に、小規模な勉強会を定期開催している。 内容は、Kumar V et al., Robbins and Cotran Pathologic Basis of Disease, 9th Ed. (2015). の輪読を毎週行い、さらに the New England Journal of Medicine の Case Records of the Massachusetts General Hospital を題材にした議論を 隔週で行う、というものである。 残念ながら現状では、私以外の研修医は参加してくれていない。
この勉強会を行う最大の理由は、単に面白いから、というものであるが、我々研修医にとっても、学生にとっても勉強になる。 この教科書や Case Records に書かれている内容は、割とマニアックなので、もちろん、医師国家試験や臨床には直結せず、その意味では「役に立たない」ものである。 しかし、あたりまえのことであるが、疾患の成り立ちをよく理解し、医学的に合理的な思考を身につけることで、将来の臨床や研究などに大いに役立つであろう。
この勉強会に参加してくれている学生の中に、二名、恐ろしいほど学識豊かな者がいる。 的確な疑問を投げかけ、また、私が少々は疑問に思いつつも解決せずに放置していた点について鋭い指摘が加えられたことは、一度や二度ではない。 そうした医学的思考の充実という点について、私が彼らの学年であった時のことを思い返すと、自信を持って「私の方が優秀であった」と言うことはできない。 なお、医学知識の量に関しては、間違いなく、学生時代の私よりも彼らの方が上である。
そういう恐ろしい学生がいるものだから、勉強会の予習も、否応なしに細かくなる。 教科書を読むにしても、いつも以上に厳格に読み、批判しなければならない。 「北陸医大の研修医は、この程度か」などと彼らを失望させることは、何としても回避せねばならぬ。
大学入試の序列でいえば、我が北陸医大は京都大学や名古屋大学などに及ばないが、だからといって、 医師、医学者としての資質において、北陸医大の学生が京都大の学生より劣るという道理はない。 そして、これは京大や名大で暮らした経験から言うのだが、こうした名門大学は一見「すばらしい」教育システムを備えているものの、 実際にはそれを享受したからといって、人が育つわけではない。
昔の人は、寧ろ鶏口となるも牛後となるなかれ、と言った。鶏の嘴は、時として、牛の角よりも鋭い。