これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
我が北陸医大 (仮) は、北陸地方随一の名門医学部である。 現時点では、名古屋大学や京都大学などに多少の遅れをとってはいるものの、21 世紀後半に日本の医学を導くのは、我々、北陸医大である。 と、私は思っているのだが、どうも周囲の研修医からは、あまり賛同を得られていないように感じられる。
過日、初期臨床研修のマッチング結果が発表された。 これは、主に次回の医師国家試験を受験する現六年生などについて、来年 4 月からの研修先病院を決定する催しである。 我が北陸医大附属病院についても三十余名がマッチしたが、その大半は北陸医大出身者である。 彼らが、どういうつもりで自大学の附属病院を選んだのかは知らぬが、高い志と未来への野心を抱いて、この地に留まることを選んだのだと期待している。
北陸医大の多くの学生や研修医が、名古屋大学や京都大学の連中より劣っている点があるとすれば、それは学識や手技の巧拙ではなく、志の高さであろう。 医師としての最低水準を満足すれば良い、与えられた任務を遂行できれば充分である、そうした卑屈な思考が、遺憾ながら染みついてしまった者が多いのではないか。 研修医室で、空き時間に医学や医療を議論するのではなく、スマートフォンのゲームで時間を潰す研修医が少なくないという現状は、北陸医大の恥であると言わざるを得ない。 彼らの大半が北陸医大出身者であることを思えば、この惨状の責任は、医師としての誇りと情熱を学生に伝えることを怠り、 国家試験対策に特化した教育を施してきた、北陸医大の教育当局ならびに教授陣にある。
私が北陸医大に行くと決めた時、少なからぬ人々から、やめた方が良いのではないか、と言われた。 初期研修の後も当面は北陸医大に残るつもりである、ということを言うと、エラい先生方の一部は、やめた方が良いのではないか、と、親切心から助言してくれる。 確かに、名古屋大学とか京都大学とかいった、しっかりした教育システムのある場所の方が、医師としての良質な訓練を受けることができるであろう。 日本の医学の第一線で病理学者、あるいは病理医として活躍するためには、たぶん、その方が確実である。 しかし、それでは、せいぜい「極めて優秀な病理医」ぐらいにしか、なれまい。
だいたい、私に「やめた方が良いのではないか」などと言った人々は、せいぜい、どこぞの大学教授程度なのであって、医学の神様でも何でもない。 確かに京都大学や名古屋大学は名門だが、そんなものは、単なる看板に過ぎない。 極一部の例外はあるものの、京都大学や名古屋大学の中の人の大半は、実はそれほど大したことはないということを、私はよく知っている。 それに比べれば、荒涼たる原野の広がる北陸医大の方が、開拓の余地を残している分だけ、将来性があるといえよう。