これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/10/05 北陸医大出身者がいわゆる名門大学に移ることについて

北陸医大 (仮) は、現状では、世間からの評価が特に高いということはない。 そのせいか、北陸医大では、北陸医大出身者が旧帝国大学などの名門大学に移っても、あまり高い評価は受けられず、まともに扱ってもらえない、と噂されているらしい。 この件について、我が愛する第三の母校のことを悪く書きたくはないが、私も科学者の端くれである以上、 自身の信じるところを率直に指摘する道義的責任がある。

実際のところ、北陸医大出身者が他大学に行った場合に、どういう扱いを受けるのかは、知らぬ。 しかし、これまで旧帝大に移った北陸医大出身者が低く評価されてきたとすれば、それは北陸医大のブランド力の問題ばかりではないだろう。

北陸医大医学科においては、国家試験対策を重視した「教育」が行われているのが現実である。 もちろん、そうした「教育」は名古屋大学でも行われており、私は臨床実習のレポートなどで 「一体、いつから名古屋大学は国家試験対策予備校になったのでしょうか」というような批判を何度も述べた。 これは、そうした攻撃が、名古屋大学の人々の自尊心に訴えかけ、羞恥の心を呼び起こすことができると信じていたからである。 実際、そうした不満、教育当局への批判に対して、教授陣はともかく、同級生や下級生の友人諸君からは一定の理解を得られていたと思う。 しかし北陸医大に来てからの半年間、私は、その種の批判を北陸医大の人々に対して公然と口にしたことはない。 極めて遺憾なことであるが、もし、私がそれを述べたならば、北陸医大の人々の多くは 「まぁ、北陸医大は、医師になるための職業訓練学校だよ」などと開き直るであろうことが容易に予想されるからである。

北陸医大の学生の中にも、こうした教育のあり方に対して不満を抱いている者はいる。 しかし、その数は圧倒的に少なく、また、彼らの不満を理解できる者も少ないのではないかと思われる。

もちろん、こうした「教育」を施さねばらないセンセイ方の事情は理解できるし、それを内心では恥じていることも、心苦しく思っていることも、私は知っている。 北陸医大は、地元に臨床医を供給するという使命を帯びており、そのために彼らとしても苦渋の決断を迫られたのであるから、一概に責められるべきではあるまい。 しかし、結果として、北陸医大が優秀な若者達から未来への野心と希望を奪い、その可能性の芽を摘んできたことは事実であり、その罪は重い。 そうした先人の罪を贖うことは、我々、北陸医大の若手の責務である。

私が何を言いたいのかというと、外の世界をみろ、ということである。 なぜ、あなた方は、医学的な物事の判断基準として「(北陸医大の) ○○科では、こうしている」とか「(北陸医大の) ○○先生が、こう言っていた」などということを持ち出すのか。 たかが北陸医大の教授、北陸医大の医師の言うことを、なぜ、それほど重視するのか。なぜ、県外や国外の動きに目を向けないのか。 どうして、疾患の本態、本質を理解しようと努めないのか。 それで「国際水準」などと、胸を張って言えるのか。


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