これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/12/24 ある同級生を思い出したこと

過日、北陸医大 (仮) 二年次研修医の某氏と話していて、名古屋大学時代の元同級生の女性ことを思い出した。 彼女は学年で二番目ぐらいに優秀で、基礎医学も含めた医学全般に見識の高い人物であった。 彼女とは、卒業直前に一度、ゆっくりと話をする機会があった。 どうやら、私が常日頃「どうせ高卒で医学部に入る学生など、ろくな動機を持っていない」などと言っていたのに対し、不満を抱いていたらしい。 彼女自身が、いかにまっとうな理由で医師を志したかを教えてくれた。 ただし、彼女は同級生の中でも抜群に優秀な人物なのだから、一般の医学科生について「ろくな動機がない」と指摘する私の主張に対する反論には、なっていない。

上述の元同級生のことを思い出したのは、現状として医師に与えられている社会的・経済的な恩恵の妥当性を巡る論争の過程であった。 私は、道半ばで落ちこぼれたとはいえ、あくまで工学部出身の人間である。 我々からすれば、工学系の人々に比して、医師の方が社会的に重い責任を負っているとは思われない。 それを、医者は社会的責任が重いから、などと称して、チヤホヤされ高給を受けとることを当然視する意見は、到底、容認できない。

ところで、私は、北陸医大 (仮) の研修医の中で、いささか独特の位置を占めることに成功しつつあるらしい。 過日、非医師の職員と話している際に、私は公然と「医者の金銭感覚は、少しおかしいのではないか」などと述べた。 これに対し、その職員氏は「外では言えないけれど、ちょっと、(医者は) 非常識だと思うところはある」などと言った。 その場に居合わせた別の職員氏が「外では言えないって、今、現に言ってるじゃないの」と指摘すれば、 「まぁ、○○先生 (私のこと) は別よ」とのことであった。 どうやら、私は「医者」という括りに入っていないらしい。たいへん、嬉しいことである。

もちろん、その職員氏らも、私がやがて地位を得れば、現在エラそうにしている医者連中と同じようになるのではないか、との疑念は抱いているであろう。 その一方で、私だけは違うのではないか、との一抹の期待も、持たれているのではないかと思う。 ついでにいえば、某教授や、同期研修医の某氏からも、「君が、いつまで、そういう姿勢を保っていられるか、見物である」などと言われたことがある。

要するに私は、そういう人々の期待を背負って、ここにいるわけである。 変節するぐらいなら、医者を辞める。 そういう覚悟で、今後とも、戦っていく所存である。

2016.12.25 語句修正

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