これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/03/15 The New England Journal of Medicine の読み方

週刊 The New England Journal of Medicine には、毎週、4 報程度の original article が掲載されているが、 これは臨床試験やコホート研究の形をとった「理論なき統計」の論文が多く、面白くない。医学的に重要であるとも思われない。 同誌の日本国内版には、こうした original article の abstract の日本語訳も掲載されているので、基本的には、それだけ読めば充分である。 とても興味を引かれたら introduction と conclusion を読み、なお中身が気になったら、全文を読めば良い。

それに対し、同誌に隔週ぐらいで掲載される review article は、なかなか、よろしい。 たとえば 3 月 9 日号では、Psoriatic Arthritis, つまり乾癬性関節炎について、並の教科書よりもはるかに詳しく丁寧に解説している。 少なくとも Campbell's Operative Orthopaedics, 13e (2017). や Rook's Textbook of Dermatology, 9e (2016). といった名著よりも、詳しい。 学生や研修医などが勉強のために読むには、original article などより、こちらの方が良いだろう。

他にも、images in clinical medicine というものは毎号、掲載されている。 これは、臨床的な写真と症例の簡潔な要約から成る 1 ページの記事であり、5 分程度で手軽に味わえる。欠かさず読むべきである。 なお、これは毎号 2 例が掲載されているのだが、冊子版には 1 症例のみが掲載されており、もう 1 症例はオンライン版にのみ掲載されている。

もちろん、月 3-4 回掲載される Case Records of the Massachusetts General Hospital も勉強になる。 これは医学的論理的に診断をする過程を重視した、ClinicoPathological Conference (CPC) の抄録である。 非常に有名な連載記事であり、世界中の大学や病院で、勉強会の題材にされている。 もちろん、我が北陸医大 (仮) でも、これを題材にした勉強会が行われている。

月 1 回掲載される Clinical Problem-Solving も症例ベースであるが、どちらかといえば一般内科、あるいは、いわゆる総合診療寄りの内容である。 学生が気楽に読むには、上述の Case Records よりも、こちらの方が親しみやすいかもしれぬ。

ともあれ、週刊誌というのは、そもそも娯楽のために読むものであって、我慢してウンウン苦しみながら読むような代物ではない。 The New England Journal of Medicine にしても、学生価格なら毎週 500 円程度であるから、そこらへんの漫画雑誌と大差ない。 気になった記事、面白そうな記事だけ読んだ後は、周囲の学生や研修医を威圧する目的で本棚に並べておけば良い。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional