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2017/03/10 上下関係

医療業界における慣習としての上下関係については、過去にも何度か書いた。 歴史的経緯は知らぬが、医師の間では、特に外科系を中心に、いわゆる体育会系の、年功序列式の上下関係が広く形成されているように思われる。 この上下関係が無意味で不当かつ非生産的であることは、言うまでもない。 こうした、彼らが「当然のこと」として受け入れている上下の序列は、日本の医師界においてのみ通用する「常識」に過ぎず、 無論、精神的に医科ではなく工科に帰属している私は、それに束縛されない。

おべっかを使うことを好む風潮が、一部には存在する。 指導医の言うことに逆らわず、反論しないことが、良いとされるのである。 指導医と称する人の中には、自分のやり方について素直に従わない学生や研修医から異論を唱えられると、教える気がなくなる、などと言う者もいる。 私も名古屋大学時代、臨床実習の際に、指導医が答えられないような小難しい質問をして、冗談だか本気だか知らぬが、「指導医に恥をかかせてはならぬ」と言われたことがある。 ついでに言えば、心電図理論について思う所を述べただけなのに「循環器内科に喧嘩を売った」などと同級生らに噂されたこともある。

実に、くだらない。 異論を唱えるというのは、よく勉強し、よく考えている証拠である。 指導医は、その学生なり研修医なりの唱えた異論が、どう間違っているのかを示せば済むだけのことである。それこそが教育である。 それを為せないならば、それは指導医の側が不勉強なのだから、「教える気がなくなる」と拗ねるのではなく、むしろ自身の不肖を恥じるべきである。 その恥の精神すら持たないようであれば、指導者としての資質を欠いているとの批判を免れることはできない。

少なからぬ学生や研修医は、この上下関係について、次のように正当化しようとする。 すなわち、我々は初心者なのだから、まず「上の先生」のやり方を習い、充分に熟達した後に、初めて、独自の工夫などを行うべきである、と。

理科や工科の人であれば、これを読んで噴飯するであろう。 全く科学的でなく、合理的でもないからである。 しかし遺憾なことに、医師の世界の一部では、こうした古臭い徒弟制度のような発想が、未だに残っているのである。 もちろん、これを「医療とは、そういうものだ」などとして弁護することは、できぬ。 本当に高い学識を持ちキチンとした教育者が、そうした徒弟制度を支持している例を、私は知らぬ。

容易に想像されることであろうが、私は、一部の指導医からは猛烈に嫌われている。 北陸医大 (仮) の教員のうち二名ほどは、私と廊下ですれ違う際に、目も合わせようとしない。 まぁ、彼らの気持ちも理解できなくはない。残念なことではあるが、やむを得ない。


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