これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/02/27 男女差別と小池百合子

久しぶりに、男女差別の話を書こう。 北陸医大 (仮) 附属病院の 1 階にはフードコートがある。名称はフードコートだが、ショッピングセンターなどでみかけるような形式のものではなく、普通の食堂である。 私は、だいたい一日に 2 食ぐらい、ここで食事をしている。

最近、この食堂のメニューに「レディース ホットサンドセット」というものが登場した。 写真をみる限り、普通のホットサンドである。なぜ、メニューに「レディース」などという名称を掲げているのか。 不愉快な男女差別である。

映画館などで「レディースデー」と称し、料金などの面で女性を「優遇」しているのをみかけることもある。 これは一見、女性優位に扱っているようにみえるが、根本的には、女性の方が男性より社会的あるいは経済的地位が低いことを暗黙の前提とした措置である。 すなわち、男女差別、男女格差を固定化するものであって、むろん、憲法の禁じる不当な男女差別にあたる。

朝日新聞 digital に、東京都知事の小池百合子へのインタビュー記事が掲載されていた。 「かわいいね」言われる時こそ甘えずにというタイトルである。 私は、この人の支持者ではない、というより、むしろ反小池派なのだが、日本の男女差別社会を切り崩す先陣としての活躍にだけは期待している。 上述の記事の内容についても、概ね異論はない。この国における、女性の社会的扱いは、おかしい。 ただし、この記事には、2 点、同意できない箇所がある。

記事の中で、小池は 男性の場合は、しがらみや「こうあるべきだ」という既成概念に縛られがちですが、女性はそれがない。時代の変革のドアを開ける役目があるんじゃないかと思っています。 と述べてしまっている。たぶん、口がすべったのであろうが、これは、言うべきではなかった。 男女差別の背景には、そもそも、性別についての不適切なステレオタイプが存在している。 男性はこうあるべき、女性はこうあるべき、という無意味な決めつけが、差別を生んでいるのである。 従って、差別と戦おうと思うなら、そのステレオタイプを否定しなければならない。 仮に、統計的に「既成概念に縛られる男性が多い」という事実があったとしても、それをもって「男性は既成概念に縛られがち」などと言うべきではない。 それを言ってしまえば、「統計的事実」に基づいて「日本の女性は学問に疎い」というような不当な決めつけを許すことになってしまうからである。 こういう軽率で浅慮な発言が時折みられるから、私は小池が嫌いなのである。

また、上述の記事では 大学などの成績では男性よりもむしろ女性のほうが優秀なのに、企業や組織に入るとそれが逆転する。 男性のほうが、ある意味ゲタをはかせてもらっているんですよ、この国は。 などと述べているが、これも事実に反し、女性を過大評価している。 京都大学工学部などでは男女比の偏りが著しく、事実上の男子校、などと言われる有様である。私の学年は、物理工学科 200 余名のうち女性は 6 名のみであった。 化学系や生物系では比較的女子学生も多く、また文科でも女性が多いが、それでもせいぜい、男女比は 1:1 に近い。 名古屋大学医学部医学科でも、女子比率は 2 割か 3 割である。 そもそも、最前線で学問をする女性が、男性に比べて圧倒的に少ないのである。

大学の成績ほど、あてにならないものはない。コツコツと過去問をみて、マジメに無難なレポートを提出していれば、成績は良くなるであろう。 確かに、女子学生には、そういう者が多いかもしれぬ。その意味では「大学の成績では女性の方が優秀」という小池の言葉は正しいが、それは人材としての優秀さとは関係ない。

ただし、女子学生の中に、稀に、驚くほど優秀な人物がいるのは事実である。 私が出会った限りでも、京都大学時代に一人、名古屋大学時代に一人、北陸医大 (仮) に来てから一人、恐ろしくデキる女性をみて舌を巻いたことがある。


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