これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/02/06 JFK

かつて米国に John F. Kennedy という男がいた。賢者であった。 彼が大統領就任演説で述べた次の言葉は、日本でもよく知られている。

And so, my fellow Americans: ask not what your country can do for you --- ask what you can do for your country.

これは、黒田和雄訳『英和対照 ケネディ大統領演説集』(原書房; 1963 年) で次のように訳されている。

それゆえ, わが同胞であるアメリカ人諸君, 諸君の国が諸君のために何をなしうるかを問い給うな --- 諸君が諸君の国のために何をなしうるかを問い給え。

この部分だけをみると、何だか全体主義的な、個人の自由を否定する言葉のように聞こえ、JFK は、かくも野蛮な男であったのかと誤解しかねない。 しかし黒田が「国」と訳した語は、原文では country であり、むしろ「人々」とでも訳した方が意味合いとしては適切であろう。 実際、この言葉は次のような主張に続いて発されたものである。

Now the trumpet summons us again --- not as a call to bear arms, though arms we need --- not as a call to battle, though embattled we are --- but a call to bear the burden of a long twilight struggle, year in and year out, `rejoicing in hope, patient in tribulation' --- a struggle against the common enemies of man: tyranny, poverty, disease and war itself.

Can we forge against these enemies a grand and global alliance, North and South, East and West, that can assure a more fruitful life for all mankind? Will you join in that historic effort?

つまり、貧困や戦争といった人類共通の敵と戦うために、世界中で手をとりあって立ち向かおう、という文脈において、 他人から何かをしてもらうことよりも、自分が他人のために何をできるか考えろ、という意味なのである。

さて、我々は初期臨床研修医である。 大学や病院から何を得られるか、何を教えてもらうことができるか、何をやらせてもらえるか、ということに注意が向くことは、やむをえない面もある。 しかし同時に、自分が人々のために、社会のために、何をできるか、本当に考えている者は、どれだけいるだろうか。 与えられた仕事をこなすことに汲々として、自分のことばかり考えるように、なってはいないか。


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