これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/01/14 MR

MR (Medical Representative) の悪口を書く。 先日、研修医向けのセミナーに併せて行われた薬剤説明会での話である。

ある感染症治療薬について、某社の MR 氏が説明してくれた。 こういう説明会では、大抵、作用機序については詳しく説明されない。 たぶん、臨床医の多くが薬理学に疎く作用機序に無関心なので、製薬会社側も聴衆の程度に合わせた説明をしているのであろう。 まぁ、医学に無関心な医師ばかりが集まる病院であれば、そういう薬剤説明も通用するかもしれないが、天下の北陸医大 (仮) においては、それでは不足である。 そういうメッセージを込めて、私は「その病原体に感染した細胞のアポトーシスを誘導するのか、それとも、宿主細胞から病原体だけを排除するのか」と質問した。

私は、医師の中では生理学や薬理学に精通している方であると思うが、所詮、医師の中では、という程度の話である。 薬剤師や製薬会社の研究者、あるいは MR などには、遠く及ばない、はずである。 だから、一流の MR であるならば、私が抱く程度の疑問については既に興味を持って調査済みであり、即答できるはずである。 その薬剤説明会に来ていた MR 氏が一流の人物であったかどうかは、書かないことにしよう。

研修医や若い臨床医の中には「治れば良いのだ」などといい、薬理学的理解を軽視する者もいる。 たぶん、学生時代にまともに医学を修めず、経験と丸暗記だけのマニュアル診療で、自分が医者をやっているかのように勘違いしているのであろう。 そういう人々は、私をみて「あいつは臨床に向いていない」などと言うが、本当に向いていないのは、一体、どちらの方であるか。 作用機序を理解することなしに、患者の体の中で何が起こっているのか、どうして理解できよう。 生理学・薬理学・病理学などを識らずに、ただマニュアルに従って投薬するだけなら、医者などいらぬ。

医学というものを、軽くみすぎなのではないか。


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