これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
スターリングの浸透圧の法則の破れについて書くつもりであったが、文献調べなどの準備が間に合わなかったので、代わりにユダヤ教徒とペルシア人の話をしよう。 昨年末の産経新聞にトランプ外交、鍵握るユダヤ人脈 イスラエル右派にてこ入れか という記事が掲載されていた。 要約すると、次期米国大統領のトランプの娘の夫は正統派ユダヤ教徒であって、イスラエルと称する中東の武装勢力に対する支援に熱心だ、ということである。 特に、イスラエルによる占領地への入植活動への支援に力を入れているらしい。
二年と少し前にも書いたが、イスラエルと称する勢力は、国際連合決議に基づいて「建国」されたものであるが、 そもそも国連には、そうした国家の樹立を決定する権限はない。 当然、アラブ諸国の多くやイランなどはイスラエルを国家として認めておらず、紛争が続いている。 イスラエルは、欧米からの軍事的その他の支援を受けて、国連決議で認められた範囲を越えて、エルサレムその他の広大な土地を占領した。 そして占領地に自国民を移住させることにより、自国領としての既成事実化を図っている。これが、いわゆる「入植」である。 国際的な常識からいえば、そうした入植活動は認められないのであるが、欧米諸国は、諸般の事情からイスラエルに対して寛容である。
ここで問題にしたいのは、産経の記事中にある「ユダヤ教正統派」という語についてである。 正統派というのは、英語では orthodox と表現される宗派であって、キリスト教でいえば正教にあたる。 ユダヤ教正統派といえば、昔ながらのユダヤの教えを忠実に守る人々の総称であって、保守派、と言い換えても良い。 当然、正統派の中にも、細かな意見の違いによる多数の派閥があるが、シオニズムを支持するかどうか、で大きく二つに分かれる。
シオニズムというのは、パレスチナの地は神がユダヤの民に与えられたものだ、というユダヤの教えを根拠に、 パレスチナにユダヤ人国家を建設することを支持する主義をいう。 このシオニズム運動の最大の成果が、イスラエルと称する勢力の樹立である。 以前の記事でも書いた通り、正統派ユダヤ教徒の中には、シオニズムに反発する者も多い。 ユダヤ社会の再興は、神が彼らに約束されたものであり、神の手によって成されるべきものなのだから、 それを人の手で、それも武力によって達成するというのは、背教にあたる、というのである。
産経の記事は「ユダヤ教正統派はシオニストである」という前提で書かれている。 これは、真のユダヤ教徒に対する侮辱である。 以前にも紹介した真のユダヤ教徒はイスラエル国家を認めないの動画へのリンクを再掲しておこう。
ところで、近年では、イスラエルに正面から敵対している国の筆頭はイランである。 イラン人の中には、彼らの土地に対する歴史的な呼称に基づく「ペルシア人」という呼び方を好む者も多いらしい。 そのペルシアは、今でこそイスラム圏屈指の大国であるが、歴史的には、アラブ人やアジア人による侵略に苦しめられ続けてきた。 確認しておくが、アラブ人というのは「アラビア語を話す人」という意味であって、地理的には北アフリカから中近東の範囲に多い。 ペルシア人はペルシア語を話すので、アラブ人ではない。 教養の乏しい日本人の中には、アラブ人とイスラム教徒を混同する者も稀ではないが、たいへん失礼な話である。
なお、ペルシアは、1979 年の革命以来、イスラム教と政治の結びつきが強い。 このあたりの問題については、イラン人女性が描いた漫画『ペルセポリス』が、面白い。
さて、日本のマスコミの多くは、イスラエルや米国に同調して、たとえば核開発疑惑などを騒ぎ立て、イランを悪者に仕立て上げようとしているようである。 しかし、原子力の平和利用や、そのための技術開発は、国際条約でも認められた当然の権利なのであって、外国にとやかく言われる筋のことではない。 だいたい、イランがやっている程度のことは、我々日本だって、やっている。 要するに、イスラエルの敵だから叩いているに過ぎない。
私は、真のユダヤ教徒とペルシア人を、応援している。