これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/06/03 この病院の診療体制は……

学生時代の私の認識では、名古屋大学医学部附属病院の診療の質は、低かった。 この「低い」というのは、「他の病院に比べて低い」とか「標準的な医療に比べて低い」という意味ではなく、「理想的な、あるべき姿の医療に比べて低い」という意味であって、「世間が天下の名古屋大学に期待すべき医療水準に達していない」と言い換えても良い。 そこで私は、カルテ室で「この病院の診療体制は、一体、どうなっているんだ」などと憤慨し、近くにいる学生を捕まえては、カルテの内容に対する医学的見地からの批判を述べて困惑させる、ということを繰り返していた。 そうした指導医に対する悪口を聞かされる学生はたまったものではなかっただろうが、それでも、ニヤニヤしながら私を見守ってくれる同級生は多かったのだから、名古屋大学の学生の質は、なかなかのものであったといえる。

敢えて詳細には記さないが、残念ながら我が北陸医大 (仮) では、いささか時代遅れというか、標準に満たないとまでは言わないものの最適とは言いがたい内容の医療行為が、名大病院よりも少しだけ高い頻度で実施されているように思われる。 もちろん、そうした点は、これから我々が正していくのであるが、どうも私は、あまり同志に恵まれていないように思われる。 「指導医の先生がそうおっしゃっているのだから、良いではないか」とか「(キチンとした理由はないけど) そういうものでしょ」とか、あるいは「別にトラブルになっているわけじゃないんだから、どうでもいいじゃないの」「文句があるならお前がやれよ」というような発想が、学生や研修医の間では蔓延しているように感じられる。 責任意識が希薄であり、医師としての誇りが欠如していると、言わざるを得ない。

無理もないことではある。 彼らは学生時代に、医学的思考や医学的議論を学ぶ機会に恵まれなかったのであろう。 だからこそ、私のような「外様」に存在意義がある。 私は、北陸医大の外どころが、そもそも医学の世界の外からやってきたエイリアンなのであって、北陸医大の偏った常識などには、断じて縛られぬ。 指導医から疎まれることも、怖くない。 最悪、私が憎まれて北陸医大から追放されることになったとしても、それで不利益を蒙るのは北陸医大の方であって、私ではない。 もとより北陸に地縁血縁があるわけでもないのだから、私は、ただ別の大学に逃亡すれば済むだけのことなのである。

偏狭な医学界の中では私が異端であるようにみえたとしても、世間からみれば実は私の方が常識的で多数派であることを、私はよく知っている。


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