これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2016/04/14 名大救急科

私は北陸医大 (仮) の某教授から聴いて初めて知ったのだが、名古屋大学医学部附属病院救急科の医師が、今年 3 月で集団退職したらしい。 これは地元新聞の報道によれば、医師 21 人のうち 9 人が離職したという。 この集団退職の詳しい背景は知らないが、報道によれば、退職者の一人は「明らかに理不尽と感じる方針を押しつけられ、他の診療科とあつれきが生まれる場面も何度もあった」と語ったという。

私は、もはや名大病院とは無関係の立場であるから、こうした一般報道によって得られる以上の情報は持っていない。 ただ、確かに、私が名大にいた頃にも、教授と若手との間に温度差がある、という噂は聞いていた。 現在の名大救急科の教授は、救急医学に対する情熱の塊のような人物であり、研究や診療だけでなく、教育、とりわけ救急医の育成に力を入れている。 教授は、研究面では敗血症の病態の解明を専門としていることからわかるように、理論を重視する、正統派の医学者である。 救急医療の現場でも、病態を考えろ、ということを若手医師らに対して強調している、という噂を、私は学生時代に耳にしたことがある。 一方、救急医療に従事しようとする若手医師の中には、理論を軽んじる者が少なくないように思われる。 誰であったか忘れたが、ある救急医志望の学生が「救急医療では、どういうときにはどうすれば良いか、全部決まっているから、頭を使わなくて良い」などと言っているのを、私は聞いたことがある。 私の想像では、このあたりの基本的な姿勢の相違に加えて、教授が、自分と同じ程度の情熱を他のスタッフにも求めたために、一部の医師が「明らかに理不尽と感じる方針」と認識したのであろう。

名大から北陸医大に脱出した私からすれば、この救急科教授は、タダモノではない。 あの保守体質の名古屋大学にわざわざ赴任して、当然に予想される周囲からの反発と戦ってまで改革を遂行しようなどというのは、正気の沙汰とは思われぬ。

私も、いずれ、この教授のようになりたい。


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