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来る 7 月某日に、北陸医大 (仮) の 5 年生に対して、北陸医大附属病院における初期臨床研修についての説明会が行われる。 私は、光栄にも、そこで数分間ではあるが、話をするという任務を与えられた。 予定では、大学病院で研修を受けることの利点と、大学の中でも特に北陸医大が優れている点とを、述べるつもりである。 もちろん、どこかで聞いたような通り一遍のことを話してもつまらないから、少し普通とは違った切り口で攻めるつもりである。
大学病院の長所としては、文献が豊富であることや、学識豊かな教授陣が揃っていることも大きいのだが、 それが何如に恵まれたことであるかは、多くの学生には容易に理解できまい。 一般的な学生にも通じるであろう表現をするならば、大学病院における研修の長所は「もう一歩、深く」ということである。 臨床的な鑑別診断の行い方や、治療方針の決め方などを身につけるだけならば、確かに、市中病院の方が経験をたくさん積めて、良いかもしれぬ。 しかし、医師としてのキャリアの始まりだからこそ、性急に経験量を求める前に、しっかりとした基礎を、正確な医学的理解に基づいた学識を、修得するべきである。
問題は、これまで自然科学を学んでこなかった人々、基礎の重要性を知らない人々に対して、いかにして、それを伝えるか、ということである。 本当のことをいえば、理路整然とした論法で、懇々と語り合いたいのであるが、正直にいって、それが北陸医大の学生に通じるとは思えぬ。 とはいえ、虎の威を仮りたり、話術で煙に巻くのは、私のプライドが許さぬ。 いったい、どうしたものか。