これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
日本語をろくに使えない医者が多い、という話は過去に何度も書いたし、おかしな敬語についても昨年末に書いた。 おかしな敬語について、もう一つの例を紹介しよう。
ある入院患者について、たとえば何か皮膚病変が出現したので皮膚科受診を提案する場合について考える。 この時、他院の事情はよく知らぬが、北陸医大 (仮) の場合、患者に対して「皮膚科の先生に診ていただきましょうか」などと言うことがある。 もちろん、これは不適切である。 「皮膚科の医師」は、こちらの身内なのだから「先生」と呼ぶのは不適であるし、「診ていただく」も、おかしい。 こんなことは一般社会においては常識であるが、医療の世界においては、こうした不適切な表現が横行している。 医師は偉いのだ、という特権意識が根付いているためだと思われる。 これは、単に言葉だけの問題ではない。背景には、医者は偉い、医者は尊敬されて当然だ、というような意識が存在するように思われる。
我々が患者の生命を握り、人生を大きく左右する立場にいるのは事実である。 これは単に、それが我々の職務だからであって、我々が偉いわけでも、我々が特権階級なわけでもないことは当然である。 しかし、何かを勘違いし、甚だ不謹慎な言動を示す医者や学生が存在することも、また事実である。 その不謹慎な内容を敢えてここに記そうとは思わないが、医療漫画の類に登場する「不謹慎な医者」を想像していただければ、遺憾ながら、だいたい合っている。
手術室での不謹慎な言動も、患者を侮辱するような噂話も、結局のところ、相手を自分より下等な相手とみなすところから始まっている。