これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/06/20 服装について

過日、北陸医大 (仮) の某外科に、新しい教授が着任した。 この新教授は、これまで名古屋大学に勤めていた人である。

新教授が着任して以来、この外科の人々の服装が変わった。 どうやら教授が「男子は原則としてネクタイを着用すべし」と布告したらしい。 男性医師は、それまで、いわゆるスクラブ姿で歩き回ることが多かったのだが、ネクタイに長衣型白衣、のスタイルに改められたのである。

この「ネクタイに長衣型白衣」というのは、名古屋大学における男性医師の標準的な服装である。 一方、北陸医大では、スクラブと呼ばれる半袖シャツを着ている医師が多い。 ネクタイに長衣型白衣を着ているのは、私以外には、年長の内科医ぐらいである。 これは文化の相違と呼ぶべきものであって、どちらが優れていると一概には言えない。

北陸医大に長くいる人からすると、外科医がネクタイを結んでいる姿というのは、何か異様な風景で、なかなか馴染まなかったようである。 しかし私からすると、慣れ親しんだ服装であって、何の違和感もなかった。

ところで、大学病院では、特に休日は、様々な格好をした医者が歩き回っている。 過日、私が病院の食堂の窓の外側にある通路を歩いていた際、たまたま、窓際の席に座っている壮年の男性と眼が合った。 誰であったか、すぐには思い出せなかったのだが、知っている人のような気がしたので、どこかでみた患者さんかな、と思い、会釈をして通り過ぎた。 所用を済ませて研修医室に戻る際、その男性と、今度はすれ違った。 T シャツに短パン姿のその人物が誰であったか、思案しながら研修医室に向かう途上、ハッと気がついた。

教授であった。 それも、病理学の。 私が所属しているのは、いわゆる第一病理学教室であり、この男性は、隣の第二病理学の教授なのである。 教授、一体、なんという威厳のない格好で院内を歩いているんですか、などと内心でつぶやきつつ、私は研修医室に帰った。

入院患者も、まさか、あの T シャツ短パンで院内を歩いていた男が教授様であるとは、夢にも思わないであろう。

2017.06.21 脱字修正

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