これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/06/12 研修医自殺

私は世相に疎いので、よく知らなかったのだが、新潟市民病院で後期研修医が自殺したらしい。 詳しい事情はよくわからないが、過労を背景として鬱病を発症し、自殺に至ったものと思われる。 元・准看護師であり、28 歳で新潟大学医学部に入学し、34 歳で初期研修医、36 歳で後期研修医となって一年足らずで亡くなったらしい。 医学部卒業は、私の場合よりも 1 歳、遅かったことになる。さぞ、苦労されたことであろう。

報道によれば、過重労働を巡り、新潟市民病院は「大半は医師としての学習目的であって、労働ではない」と主張したという。 同じような方便は、我が北陸医大 (仮) でも用いられている。 ある診療科などは、初期研修医が事務作業員として酷使されており、実際の時間外労働は月に 100 時間を大きく超えているにもかかわらず、形式上の時間外労働は少なくなっている。 と、いうのも、時間外労働と認められるのは「指導医の指示により患者を直接診療する行為」などに限定されており、 そうした事務仕事などは、時間外労働に含まれないのである。 また、直接命じられてはいない「自主的」な診療行為は、時間外労働に含まれないが、そういう「自主的な診療行為」をしない研修医は、評価が下がるであろう。 まぁ、世間でよくみられるような不法な過重労働は、病院においても同様に存在する、という話である。

病院、特に外科系を中心とした一部の診療科に特有の問題は、そうした過重労働を自慢する時代錯誤な風潮が、現代においても存在することである。 「患者がいるのだから、診なければいけない」などと、もっともらしいことを言って、キツいこと、家に帰れないことなどを自慢するのである。 もちろん、そういう診療体制は医師だけでなく患者にも害を為すものであって、本当は、何の自慢にもならない。 人手が足りないなら、何とかして人材を確保すると共に、他職種でも可能な仕事は分担するとか、入院患者を何とか減らすとかして、対応しなければならない。 そういう工夫を怠り、単に過重労働で補おうとするのは、あまり賢明な態度ではない。 そうと知らずに、そういう診療科にマトモな人が入ってしまうと、最悪の場合、生きていくのが嫌になるであろう。

なお、私に限って言うならば、そういう過重労働は行っていない。 本当に自分がやりたいことしか、やっていないからである。あるいは、実は危機回避能力が高いのかもしれない。 たとえば、多くの研修医は空気を読んで、本当は参加したくもない「医局旅行」とか「医局の忘年会」などに参加しているようである。 が、私は、公然と欠席している。 昨年末には、当時研修を受けていた某内科の忘年会に誘われ、一度は参加する旨を返事した。 しかし、「何か出し物をするのが慣例である」と聞き、参加を撤回した。 宴会芸の類は、みるのも、やるのも、嫌いだからである。静かな食事会だと思って参加表明したのだが、話が違うようなので、取り下げたわけである。 人によっては、こういう私の態度を「空気を読めない」と批判するであろうが、私は、空気を読む必要を認めない。

遺憾なことに、他の多くの研修医は、そういう場面で指導医に対して不要な配慮をし、ストレスを抱え込んでいるらしい。

2017.06.12 語句修正

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