これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/06/04 個人線量計

我が北陸医大 (仮) の恥部を曝すことは、私にとっても不本意ではある。 しかし、この日記は、私が何を考え、何を試みたのかを率直に記すことを旨としているのだから、恥ずかしいからといって、隠すわけにはいかない。 もちろん、事実を全て明瞭に記すことには若干の問題があるから、いささか曖昧な表現になることは、ご容赦いただきたい。

現在、北陸医大においては診療にあたり、二つの重大な法令違反が公然と反復して行われている。 そのうち一方は別の機会に書こうと思うので、ここでは、もう一方の件についてのみ触れる。

医療安全についてである。 だいたい、どこの病院でも同じだと思うのだが、我々は放射線被曝の程度を測定する個人線量計を病院から配布されている。 診療にあたり放射線を扱う機会は多く、当然、被曝の危険があるのだから、不適切な被曝を早期に発見し、早期に対応するためである。 放射線管理区域、つまり被曝の危険があると考えられる領域に入る際には、原則として個人線量計を着用せねばならない、ということが法令で定められている。

当然のことであるが、被曝の可能性がある業務に従事している看護師や放射線技師などは、例外なく、個人線量計を着用している。 もし着用していなければ、上司から厳しく叱責を受けるであろう。 一方、医師について観察してみるとと、個人線量計を着用していない者が圧倒的に多い。 もちろん、着用しないことに正当な理由はない。

「個人線量計をつける、つけないは、個人の判断だ」などと思っているのかもしれないが、着用は法令で定められた義務なのだから、個人の自由ではない。 また、放射線防護が杜撰な職場では、無知な研修医や学生が不適切な被曝をすることになる。 私は、放射線の元専門家という立場でもあるから、こうした不適切な診療・教育体制を黙って見過ごすわけには、いかぬ。

「他の医師が着用しなかったからといって、君が困るわけではないだろう」などと頓珍漢なことを言う人もいる。話にならない。 なぜ、「自分が困るかどうか」が基準になるのか。 いつから、あなた方は、そうした自己中心的な考えを恥ずかしげもなく言えるようになったのか。 不正なこと、危険なことを目撃して、ただ黙って看過することは、不道徳ではないか。

北陸医大では、定期的に、研修医と病院長の懇談会が開催されている。 その席では、研修医から病院長への要望などを述べる機会が設けられるのが通例である。 私は昨年度、この席において、個人線量計を着用しない指導医が多いことについて苦情を申し上げた。 上の者がそれでは、研修医の側にも気の緩みが生じ、医療安全上の問題が生じる、と述べたのである。 しかし、その後も個人線量計を着用しない風潮が改善された様子はないし、着用を徹底するように、との通達も受けていない。 まぁ、私の言うことに耳を貸す必要などない、と思われているのであろう。 病院側がそういう態度であるならば、私にも考えがある。

診療科によっては、個人線量計を「外すように」指導される例があると聞く。 つまり、大量の被曝を暗に前提として診療を行っており、被曝の事実が記録に残ると面倒だから、外せ、というのである。 話にならない。法令違反であり、いわゆるパワハラである。 もし、日常診療でそれほど甚大な被曝をしているのであれば、その診療のやり方に問題があるのだから、修正しなければならない。 大量被曝を前提とした診療は、不合理であり、医学的に不適切である。被曝を研修医に強いることは、暴行罪にあたる。

そうした診療科で研修を受けた研修医が、なぜ黙っているのかは、知らぬ。


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