これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/05/23 健康診断

過日、健康診断の結果が届いた。 血液検査で血球算定だけ行われており、私は、赤血球数が 542 x104/μL であった。 基準範囲は 400-539 x104/μL であるから、僅かに高値である。 それ以外の項目は全て基準範囲内であった。

結果表には「医師の診断」という項目があり「要経過観察」とのみ記載されていた。 何をどう経過観察するのかは、述べられていない。 なお、「健康診断を実施した医師の指名」として、県の健康増進センターの某という医師の名が記されていた。 私は、この診断にフンガイし、近くにいた研修医に対して「この○○という奴は、藪医者である」とまくしたてた。

私の赤血球数が、基準範囲上限よりも 3 x104/μL だけ高いからといって、この医者は、一体、いかなる疾患を疑っているのか。 真性多血症の可能性がある、とでも言うつもりなのか。 まさか、基準範囲から外れている、というだけの理由で「経過観察を要する」などと診断したわけではあるまい。

基準範囲などというものは、「健康な人の多くが、この範囲に収まる」というだけの数値であって、これを外れたからといって「異常である」とはいえない。 だから臨床検査医学では「正常範囲」ではなく「基準範囲」と呼ぶのである。 基準範囲を外れたから経過観察を要する、などと安直に判断するぐらいなら、医者などいらぬ。 この健康増進センターの医師は、私が北陸医大 (仮) の医師であると知った上で、この診断を下したはずである。ある意味、勇気があるといえよう。 それとも、北陸医大は、そこまで馬鹿にされているのだろうか。

まぁ、相手が私のような医師であれば、こういうデタラメな診断でも構わない。こいつは藪医者だ、と嗤われるだけで済むからである。 しかし素人相手に、安易に「要経過観察」などと報告すれば、どうなるか。 もしかして自分は何か病気なのではないか、と無用な心配を抱き、あるいは仕事を休んで近くの病院を受診してしまうかもしれない。 医師たるもの、自分が「要経過観察」と診断することが相手に与える影響を、よく理解しておく必要がある。

実際のところ、実はこの日、私は朝から充分な水分を摂らずに手術室に詰めていた。いささか脱水気味であったと思う。 血液も、多少は濃縮されていたはずであって、赤血球数が高めに出たのは、そのせいであろう。


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