これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
北陸医大 (仮) では、昨年度から、一年次研修医を対象にした「メンター制度」というものが運用されている。 これは長崎大学の事例を参考にしたものであって、各々の研修医に一名、「メンター」と称される医師が割り当てられる。 研修医とメンターは、少なくとも月に 1 会程度は会って話をしたり食事をしたりすることが望ましいとされ、 研修上のことや、それ以外のことなどについて、相談する機会とすることが推奨される。 理屈としては、何か悩みや困ったことなどがあれば、メンターに限らず、研修センターのスタッフや、面識のある医師などに相談すれば良い。 しかし人によっては、そうした相談をすることに抵抗を感じる研修医もいるであろうから、その障壁を取り払う目的で、公的に「メンター」制度が設けられたのである。
メンターは、立候補した 3 年目以降の医師のリストから、研修医側が指名する。 ただし一人のメンターがみることのできる研修医は最大 2 人とされており、研修医側の希望が特定のメンター候補者に集中した場合は、適宜、調整されるらしい。 メンター候補者は、簡潔な内容の自己紹介文を研修センターに提出し、研修医は、それをみてメンターを指名する。 私は昨年度、ある年長の女性医師をメンターに指名した。 彼女は、数少ない、他大学出身かつ他県出身のメンター候補者であった。 それに加えて、彼女は自己紹介文の「趣味」欄に「特になし」と書いていたのである。
普通、「趣味は何ですか」と問われて「特にありません」とは答えない。 無趣味な人間、というのは「つまらない人間」というような意味に解釈されることが多いから、なんとなく、「趣味はありません」と言うのは恥ずかしいような気がするからである。 しかし、我がメンターは、堂々と「特にありません」と書いたのである。
これは、彼女の自信の表れであろう。 堂々と「趣味はありませんが、それが何か?」と言えるのは、自分が医師として、人間として、やましいところのない、立派な存在であると自負しているからである。
実は私は、以前は「趣味は囲碁です」と言っていた。しかし高校卒業以後は、ほとんど打っていないのだから、現状では「趣味」といえるほどのものではない。 今後は、我がメンターに倣って「趣味は医学です」と言うことにしよう。