これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/04/25 名古屋大学

朝日新聞産経新聞によれば、 名古屋大学の某准教授が、学生に対し「お前は病気だ」「大学を辞めろ」「けんかを売っているのか」などの不適切な発言を繰り返し、 アカデミックハラスメントにあたるとして処分されたという。 ただし、この記事を書いている時点で、同大学のウェブサイト上には、そのような記載はみあたらない。 その処分されたという准教授の氏名も不明である。

上述の朝日新聞の記事によれば、同准教授に対する 4 月 24 日付の処分内容は「平均日給の2分の1を5月分の給与から引くというもの」であるらしい。 要するに、事実上お咎めなし、というわけである。

まぁ、情報源の朝日新聞も産経新聞も、昔から偏った悪意のある記事が多いことで有名であるから、この記事も内容は事実と異なるかもしれぬ。 ただし、もし内容が事実に相違ないのであれば、 名古屋大学を世界屈指の研究大学になどと称して 松尾清一総長が掲げる大学の指針は、妄言であるといわざるを得ない。

松尾氏のように陽の当たる道ばかりを歩いてきた人には理解できないかもしれないが、 大学における、教員による学生に対する不適切な言動、アカデミックハラスメントが、その学生に与える影響は大きい。 冷静に適切に対処すれば、そうした教員を返り討ちにすることなど造作もないように思われるのだが、 当事者の学生は、そうした冷静な判断能力を失っているのが普通である。 むしろ本件の被害学生は、よくハラスメント防止対策委員会に訴えることができたものだと思う。

アカデミックハラスメントというのは、その学生の「学ぶ権利」が損なわれるというだけの問題ではない。 教員から虐げられる学生は、必ずしも、科学者として、社会人として、能力の劣る者であるとは限らない。 ただ、その教員とそりが合わなかった、というだけのこともある。 そうした学生を教員側の恣意によって叩き潰していくことで、社会を支えるはずであった人材が損なわれ、 将来における国全体の、さらには人類全体の利益が失われるのである。

研究するだけの組織なら、大学という形をとる必要はない。国立研究所の類で良いのである。 「大学」という形態の研究機関が存在することの最大の意義は、学生、すなわち次代の科学者を育てることにある。 それにもかかわらず、一人の教員個人の恣意によって未来の科学者が傷つけられ、それに対して何らの実効的な処分も行われないとあっては、 もはや、それは教育機関ではなく、大学とはいえない。

名古屋大学の誇りは、どこへ行ったのか。


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