これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/09/03 不勉強でアレですが

過日、北陸医大 (仮) の研修医などを対象としたセミナーで、術後鎮痛薬についての話があった。 質疑応答の時間に、私は、NSAID には解熱鎮痛だけでなく抗炎症作用もあるが、これが術後の回復に何か影響するだろうか、という質問を発した。

この種の講演会やセミナーなどで質問する際の作法について、学生時代や研修医になったばかりの頃には私もいささか迷いがあったが、昨今では自分のスタイルを確立している。 たとえば、質問を述べる前に「貴重なご講演をありがとうございます」というようなことを言う人もいるが、私は、これは省略する。時間の無駄だからである。 公開された会合であれば所属と名を述べ、あるいは内輪の会合ならばそれも省略して、いきなり本題に入るのが美しいと思う。

しかし今回は、本題に入る前に「不勉強でアレですが」という前置きをしてから、上述の質問を述べた。 もちろん、周囲の研修医と比較すれば、私は相対的には不勉強な研修医ではないから、これは単なる謙遜であって、事実ではない。 普段であれば、こういう謙遜も無駄なので省くのだが、今回は敢えて入れた。 これには相応の理由がある。

私は、北陸医大の一部の指導医の間で、マニアックでネチっこい質問をする嫌らしい研修医として、少しばかり恐れられていると思う。 その私であれば、NSAID とアセトアミノフェンの相違が術後経過に及ぼす影響について既に勉強済みであってもおかしくない。 そう考えると、本当は「○○の理由で△△の方が優れていると思うのだが、いかがであるか」という形式で質問したかったのだが、 あいにく、この問題については私は未だ勉強していなかったので「何か影響するだろうか」という訊き方になったのである。 すなわち「(私の基準でいえば) 不勉強であって恐縮だ」という意味で上述の前置きをしたのである。 しかし相対的には不勉強ではないのだから、「恐縮」は言い過ぎであるように思ったので「不勉強でアレですが」という曖昧な表現になった。

ところで、質問、で思い出したのだが、 先に書いた病理「夏の学校」では、質問の際に私は敢えて「北陸医大の○○です」と名乗り、「研修医」とは言わなかった。 これも、それなりの思惑あってのことである。 というのも、私としては「北陸医大といえば○○」というような印象を他の参加者に与えたかったので、余計な単語を挟みたくなかったのである。 「北陸医大の研修医の○○です」と言ってしまうと、「研修医の○○」だけが印象に残り、「北陸医大」を覚えておいてもらえない恐れがある。

このように、質問の際の名乗り方、導入の仕方一つとっても、それなりに思惑が込められている。 が、質問し慣れていない諸君は、難しいことは考えずに、思ったままのことを口にすれば良い。 発表者からすれば、質問してくれるということ自体が嬉しいのだから、質問内容などはどうでもよく、くだらない内容で構わない。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional