これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/08/30 病理「夏の学校」(2)

昨日の記事で、名古屋大学時代の同級生のうち病理医になりそうな人の数を「5 人から 6 人」と書いたが、これは「6 人から 7 人」の間違いであったので、修正した。 ある人のことを失念していたものであり、申し訳ない。 この人は私と同様、卒業と共に愛知県外へ出ていった人であるし、今でも病理志望なのかどうかはよく知らないので、数え忘れていたのである。 だいたい、どこの大学でも、病理医になる者の数は一学年に一人ぐらいである。 それを思えば、一学年から 6, 7 人というのは異常に多い。 もちろん数だけでなく、この 7 人は、学生時代から優秀であった者ばかりである。 いずれ我々は、名古屋の病理学黄金世代と呼ばれることであろう。

さて「夏の学校」では、5 つの講演と、1 つの CPC (ClinicoPathological Conference) 形式の討論会が行われた。 CPC 形式の討論会というのは、ある臨床症例を題材に、学生や研修医、若手病理医が、各班 8 人程度の 5 つの班に分かれ、 臨床所見や病理解剖所見についてまとめ、発表するものである。 この試み自体は面白かったのだが、時間の都合上、発表内容に対する質疑応答が乏しかったのは遺憾であった。 なお、若手が構成する 5 つの班の他に、教授クラスをはじめとする熟練病理医のみで構成される「第 6 班」も発表を行った。

私は、この夏の学校に参加するにあたり「北陸医大 (仮) は、単なる地方大学ではないぞ」ということを中部地方の諸君に知らしめることを個人的な目標としていた。 なので、北陸医大を代表して何か一発、病理医諸兄姉が舌を巻くような質問を入れようと狙っていた。 そして CPC で第 6 班が発表した際、とうとう、その機会が巡ってきた。

私は、病理解剖における骨髄の組織像について「破骨細胞様の巨細胞が多数、出現しているが、これらは骨梁から離れ、間質の中に浮いているようにみえる。 一体、これらの細胞は、何をしているのだろうか。」と、質問したのである。 もちろん、これは熟練病理医陣に対し、言外に「あなた方は、この不思議な巨細胞について、疑問を持ったことがありますか」と問うたのである。

明確な回答は、発表者からも、会場からも、返ってこなかった。一本、取ったといえよう。

さて、名古屋大学の某教授は、疑問を持つことを重視する教育の実践者である。 教授は、この私の質問に対し挙手し 「それは、疑問を持った人が解決すべきことである。我々のような老い先短い者ではなく、諸君のような若い世代が担うべきものである。」と述べた。 もちろん、これは、某内科でみたような、興味本位の質問を咎めるような意味ではない。 次代を担う我々を激励し、期待を表明する意味の言葉であった。

2017.08.31 語句修正

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