これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/08/22 名古屋大学の某教授

名古屋大学大学院医学系研究科の某教授が、昨日、傷害容疑で愛知県警に逮捕された。 詳細はよく知らぬが、報道によれば親子喧嘩で娘に暴行を加え、負傷させた、とのことである。 ただし「頭や顔に 2 週間のけが」とのことであるから、それほど重傷というわけではない。 要するに、父親に殴られた娘 (23 歳) が腹を立てて警察に駆け込んだため、教授が逮捕されるに至った、という事件のようである。 娘は「十数発殴られた」と主張しているが、教授は「叩いたのは事実だが、十数発というのは大袈裟だ」と主張しているらしく、暴行自体は認めているとのことである。

言うまでもなく、親子であろうが何だろうが、他人に暴行を加えることは犯罪であるから、自白が真実であるならば、教授の罪は間違いない。 報道によれば、教授は「しつけのため叩いた」と供述しているそうだが、成人した娘相手に「しつけ」でもなかろう。 そもそも、暴力によって相手を戒めるのは「調教」であって「教育」ではなく、これを「しつけ」と称するのは野蛮である。

さて、現在のことは知らぬが、私が名古屋大学 4 年生の時には、架空の症例を題材にして学生同士で議論する PBL と称する実習があった。 8 人程度の学生で 1 つの班を作り、1 回 3 時間程度、1 つの症例について 2-3 回、つまり計 6-9 時間をかけて討論し、 各自文献を調べることなどを通じて医学に対する理解を深めよう、という実習である。 この PBL では、教員が、議論が極端に脱線しないよう監督し助言する役割の「チューター」として配置されていた。 私の記憶が正しければ、初めての PBL の際、私の班のチューターを務めたのが、今回逮捕された教授であり、当時は准教授であった。

少なくとも教育者としては、悪い人ではなかった。 だいたい、親に殴られて泣き寝入るのではなく警察に駆け込むという時点で、娘は自立した、逞しい人物であるといえる。 その意味では、教授の娘に対するこれまでの教育は、立派であったともいえよう。 が、まぁ、何にせよ、暴力は、いけない。


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