これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
留学について、誤解があるといけないので補足しておく。 私は、留学と称して海外に遊びに行くこと自体を否定しているわけではない。 遊ぶこと自体には、確かに、見聞を広げる価値はあり、日本の自宅に籠って漫画やゲームに興じるよりは、はるかに意義がある。
ただし「学ぶ」ということ自体についていえば、海外に行った方が良いとは思われない。 そもそも、現地語を母国語と同程度には扱えず、しかも医学の基礎すらよく修めていないような者が、フラフラと海外に行ったところで、何を学ぶというのか。 仮に留学先に世界トップクラスの研究者などがいたとしても、基礎のできていないヒヨコが、何を学び取れるというのか。 言葉や文化の壁を考えれば、母国で学ぶ方が、よほど有益である。 海外に行くのは、あくまで遊びなのである。
本当に海外に行って学ぶ価値があるのは、何か具体的な目標がある場合である。 たとえば間質性肺炎に興味があるが、本当に間質性肺炎を一から百まで、しっかりと理解して議論できる者が日本には少ない。 しかし米国の某教授は、間質性肺炎の神様のような人である。ぜひ、その教授に会って語り合いたい。 教授と共に研究し、診療し、そこで得たものを日本に持ち帰りたい。 そういう場合には、ぜひ、米国に学びに行くと良いだろう。
遊ぶのが悪いことであるとは思わない。学会と称して国内外に遊びに行くことも、倫理的問題を別にすれば、とんでもなく悪いことであるとはいえない。 しかし、本当は遊んでいるだけなのに、まるで自分がよく勉強しているかのように錯覚しては、ならない。