これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/07/29 優秀な学生の基準

少し間があいてしまった。 私は、この日記を大学で書いている。私はバスで通勤しているが、本日の最終バスが大学病院を出発するまでに、あと 25 分しかない。 明日の午後に予定されている勉強会の準備がまだ終わっていないが、今日は家に帰って洗濯する予定なので、何としてもバスに乗らねばならぬ。 なので、あまり頭を使わずに、調べ物もせずに書けるような内容で、お茶を濁すことにしよう。

優秀な学生とは、どういう者のことをいうのか。 名古屋大学にせよ北陸医大 (仮) にせよ、試験で良い点を取る学生が「優秀」であると言われることが稀ではない。 模試で良い成績を修め、医師国家試験で 90 % 以上の得点率を誇る者もいるが、 私の考えでは、あのような試験で「正解」できる者は、むしろ医師や医学者としての資質を欠いている。

私は北陸医大に赴任した直後より、若手勉強会を主宰している。 これは、教授や熟練の指導医からのサポートを、一切、受けない勉強会である。 若手が独立して自主的にやる、という点に最大の意義があると考えているからである。 参加者は私の他には数名の学生のみであり、遺憾ながら現時点では、他の研修医や若手技師、薬剤師、医師らは参加してくれていない。 それでも幸いなことに、少ならからぬ教授やベテラン指導医からは好意的にみられており、しばしば、励ましの言葉を頂戴している。

注目すべきことは、この勉強会に学生が参加している、という点である。 試験の役にも立たないし、臨床に直結もしない勉強会なのに、参加しているのである。たいへん意欲的であり、また、基礎的な学識の重要性をよく認識しているものと思われる。 こういう人々こそが、私の考える「優秀な学生」である。

現時点における学識の程度、臨床知識の多寡などは、大した問題ではない。 そんなものは、これから勉強していけば、いくらでも身につくからである。 しかし、勉強しようという意欲は、これから学年を重ね、経験を積んだからといって、新たに獲得することは容易ではない。 勉強しようという意欲のない者は、もはや、それ以上、成長しない。 与えられた任務をこなし続けたところで、医師として大成することは、ないのである。

我々の勉強会では、一年と少しの時間をかけて、基礎病理学の教科書の通読を終えつつある。 次は臨床薬理学を予定している。 若手薬剤師や、薬学部の学生が新たに参加してくれることを期待している。

我が北陸医大は、学生の質という点において、名古屋大学に勝るとも劣らぬ。

あと 10 分で、バスが出発する。


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