これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/07/21 コードブルー

「コードブルー」という病院用語がある。 これは、院内で一人の患者が心肺停止したなどの緊急事態が生じたが人手が足りない、というような場合に、手の空いている職員は直ちに集合せよ、という意味の隠語である。 なぜ「ブルー」なのかというと、これは比較的穏やかな状況だからである。 たとえば自然災害だとか、大規模交通事故などで多数の負傷者が出ている状況では「コードオレンジ」や「コードレッド」が発令されることもあるらしい。 が、私は未だ、そういう場面に遭遇したことはない。

さて、隠語とはいえ、「コードブルー」という語はテレビドラマなどを通じ、割と多くの人が知っているらしい。昨日の記事に登場した患者も、知っていた。 なお、私は、研修医になるまで知らなかった。 とにかく、コードブルー、ということになれば、暇な研修医などの職員は、ソソクサと現場に集合する。 この際、廊下を走る者も多い。

北陸医大 (仮) 附属病院において「廊下を走ってはいけない」という規則があるのかどうかは、知らぬ。 が、社会常識からいって、原則として、病院の廊下を走ってはいけない。 では、コードブルーの際は、例外的に、病院の廊下を走ることは許容されるだろうか。

原則として廊下を走ってはいけない理由は、もちろん、危ないからである。 現場に急行しようとする職員が、廊下を歩いている患者と衝突して怪我をさせるようなことは、あってはならぬ。 廊下を走ることで何秒か早く現場に到着することの利益と、他人と衝突するなどの事故を起こすリスクと、どちらが大きいか、という点を、よく考えねばならぬ。 昨日の記事に登場した患者は、リハビリを兼ねて病院の受付付近を散歩中にコードブルーの招集がかかり、多数の職員が走って現場に向かう場面を目撃したらしい。 「あれは、ぶつかりそうで、ちょっと危ないように思った」との感想を述べていた。 実際、その人は杖を使うことで、なんとか、ゆっくり歩ける、というような状況であったので、慌てて走る職員と軽く接触するだけでも、転倒して大怪我をする恐れがあった。

某大学の救急科教授は、「あわてて走らなければいけないほどの緊急事態というのは、現実には、滅多に存在しない」と述べた。 走るのと、早足で歩くので、どれだけ到着時刻に差が生じるであろうか。 走るのではなく、全力で歩く、というのが適切な対応であるように思われる。


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