これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/07/20 寄付について

ある患者と話していて、そういえば、と思った話である。

その患者は、難病とされる疾患を患い、診断もはっきりつかない状態で他の病院から北陸医大 (仮) 附属病院の某内科に転院してきた。 我々も頭を悩ませたが、なんとか診断し、治療を開始したところ、幸いにも治療効果は抜群で、すっかり元気になって退院することができた。

退院の一週間ほど前に、病室で雑談した時のことである。 その患者は、我々に対して大いに感謝している旨を述べた。 誤解のないよう書いておくが、医者は患者を治療するのが仕事である。 我々は、本当に言葉通りの意味で、あたりまえのことをやっただけである。 感謝されて悪い気はしないが、「感謝するのが人として当然である」とは思わない。 「金を払っているのだから、適切な治療を受けられるのが当然なのであって、別に医者に対して感謝しようとは思わない」という患者がいても、何らおかしくない。 というより、私自身が、そうであった。 また、病院には多くの職種の人々がいる中で、特に医師や看護師に対して強く感謝の気持ちを抱くことは、冷静に考えれば、おかしい。

ともあれ、その人は、その某内科の人々に対して強い感謝の念を抱いたらしい。 その気持ちを表明する意味で、研究に役立てて欲しい、と、退院したら寄付することを考えた。 寄付ということでいえば、我が北陸医大附属病院の病棟には、大学全体で設けている基金への寄付を依頼するポスターが掲示されている。 この基金に寄付した場合、使途は基金側で決め、大学全体で有効に使わせていただく、ということになっている。 その人は、これが不満であった。 その人は、某内科に対する感謝として、その某内科のために寄付したいのであって、北陸医大全体に寄付しようとは思わなかったからである。

「だから、寄付するのをやめた」と言われて、私は狼狽した。 詳しい手続きは知らないが、寄付先の部局を指定して、この場合でいえば「某内科に」と限定して寄付することも、制度上は可能であったと記憶していたからである。 そこで私は「詳しい手続はよく覚えていませんが、宛先を指定して寄付することも可能であったはずです。 案内窓口あたりで尋ねていただけると幸いです。」と述べておいた。 本当をいえば、詳しい手続をこちらで確認して知らせるのが親切ではあるのだが、まるで寄付をねだるかのような格好になるので憚られた。 一応、寄付の手続については調べた上で、次回以降に役立てることにしようと思う。

なお、こういう寄付の方法があることは周知されていないので、その人が知らなかったのも無理はない。 実際、私が北陸医大のウェブサイトを簡単に検索した限りでは、そういう寄付の方法を説明する記載はみあたらなかった。 この点、たとえば福井大学の場合は簡明な説明が設けられている。 北陸医大も、これを見習うべきである。


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