これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
北陸ローカルの話である。 北日本新聞の報道によると、富山市で創業した某機械メーカーの会長が、記者会見において、 富山出身者の採用を控える方針であるかのような発言をし、猛烈な批判を浴びている。
私は、その会長の発言の全体を聞いたわけではないが、まぁ、会長の言いたいことは理解できるし、同意する。 もっとも、これを言えば世間から誤解され、猛反発を受けるであろうことを予想できていなかったとすれば、企業のトップとしては問題があるかもしれぬ。
会長は「富山で生まれて幼稚園、小学校、中学校、高校、我が社。これは駄目です」というようなことを言ったらしい。 要するに、北陸の一地方都市に過ぎぬ富山で幼少期からずっと過ごし、その狭い社会で人生を完結させようというような人間では、 想像力に自ら限界が生じる、という懸念を表しているのだろう。 実際、「ワーカーは富山から採ります」として、特別な創造性を必要としない労働力としてなら地元民を積極採用すると述べている。 なお、会長は「富山で生まれ (他の) 地方の大学に行ったとしても、私は極力採らない」とも述べたらしい。 これは、いささか際どい発言ではあるが、わざわざ他県の大学に行って、すぐに富山に戻ろうとするのも、やはり視野の偏狭なることの証左とみているのだろう。
富山に限らず、北陸が住みやすい、素晴らしい地方であることは確かである。 しかし、いくら良い場所であっても、その場所に固執し、広い世界に眼を向けぬようでは、人材として大成しない。 そんなことは科学の世界では常識である。
医師についても、同じことである。 北陸で生まれ育ち、北陸医大 (仮) を卒業し、そのまま県内に医師として就職する者は多い。 こうした傾向は、北陸医大に限ったことではない。 名古屋大学医学部医学科の卒業生は、優秀な一部の層は東京などに転出するが、大抵は東海地方に残る。 地元愛が強いことは結構である。しかし、若いうちから地元での安楽な生活に身を任せて、はたして、それで医師として大成するのか。 いわゆる家庭医として、地域に密着した医療を提供するにしても、まずは広い世界に出て、しっかりと勉強するべきではないのか。