これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
昔の記事を読み返していて、おや、と思ったので、今さらながら訂正しておく。
2015 年 6 月 26 日の記事についてである。 よく勉強した学生や研修医であれば、すぐに気づくと思うのだが、この記事に私が書いた内容は、誤りである。 だいたい合ってはいるのだが、最後の「この変化は僅かであり、 エコー検査などで検出することは極めて困難である。」という部分が間違っている。 特に下大静脈については、超音波検査での描出が比較的容易なこともあり、「この変化」は臨床的に測定されている。 いわゆる「大静脈径の呼吸性変動」というものである。
この記事を書いた二年前の私は、大静脈径が呼吸に伴って変化する、という事実を知らなかったのである。 たぶん典型的な勉強をした医学科 5, 6 年生であれば、ほぼ例外なく、この呼吸性変動の存在を知っているのだろうが、私は非典型的な勉強しかしていないので、知らなかった。
こういうことは、割と、よくある。 周囲の皆が「常識」と思っていることを、私は、しばしば、知らない。 逆に、私が「当然」と思っていることを、周囲の人がほとんど知らないこともある。 学問というのは、そういうものであって、各人の得手不得手に応じて知識に偏りがあるのが普通である。
ところが医学科生や医師の中には、そういう個人差を認めたがらない者も少なくない。 周囲と同じであることを、やたらと尊ぶのである。 「知っておくべきこと」をやたらと覚えたがり、その一方で「知っておかなくても良いこと」にはあまり興味を示さない。
実に、つまらない。