これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/11/17 Halo sign

放射線診断学用語に Halo sign というものがある。 肺 CT の名著 Webb WR et al., High-Resolution CT of the Lung, 5th Ed. (Wolters Kluwer; 2015). によれば、これは

A halo of ground-glass opacity surrounding a nodule or mass.

とのことであり、つまり結節ないし腫瘤の周囲にあるスリガラス影のことである。 これの組織学的実体は何か、というのが本日のテーマである。

MEDSi 『胸部の CT』第 3 版には、直接的な表現はなされていないが、この halo は出血によるものである、と暗に書かれている。 なお、この『胸部の CT』という教科書は、私が学生の頃に放射線科の臨床実習に持参したところ、 ある指導医から「まぁ、日本語で書かれた教科書としては、それが一番よろしかろう」と控えめに褒められた代物である。 英語で書かれた教科書として評価が高いのは、上述の `High-Resolution CT of the Lung' であるが、 こちらには、halo の実体について明確な記載がない。 こうした名著が敢えて詳細に言及しないということは、何かある、ということである。

今日 halo sign と呼ばれる所見について、最初に言及したのは J. E. Kuhlman らの報告である (Radiol. 157, 611-614 (1985).)。 これは、急性白血病患者が合併した侵襲性肺アスペルギルス症の、CT 上の特徴的所見として報告されたものである。 その後、この halo sign は、肺アスペルギルス症に限らず出血性結節において高い感度でみられる所見として報告されたが (Radiol. 190, 513-515 (1994).)、特異度については評価が甘く、はっきりしなかった。

2000 年代に入ってから、非出血性病変においても、頻度は比較的低いながらも halo sign を呈する例があることが指摘されるようになった (Br. J. Radiol. 78, 862-865 (2005). など)。 具体的には、腫瘍細胞の浸潤や、非出血性の炎症反応により halo sign が認められるようである。 詳細な事情は知らぬが、CT の解像度向上などの技術進歩により、こうした halo sign を指摘できるようになったのかもしれぬ。

こうした halo sign の特徴を述べたレビューとしては、Radiol. 230 109-110 (2004). が簡潔で読みやすい。


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