これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/11/02 日本専門医機構による不当な男女差別的記載

地域医療研修で学んだことについて、まだ書き終わっていないが、今日は別の話をする。

多くの診療科で、来年度から新専門医制度の運用が始まる。 これは、従来は各学会が主体となって運用してきた専門医制度を、日本専門医機構という団体が主体となって一元管理しようとするものである。 特に内科領域では大幅な制度変更となるため、少なからぬ内科志望の研修医はアタフタしている。 我々病理の場合は、従来と大きくは変わらないため、気楽である。

ところで私は、専門医などという制度が嫌いである。 というより「資格」というものが全般に嫌いである。 そのようなもので、人の能力を測ることができるとは思われない。 資格取得を目的として研鑽し、勉強したかどうかの目安にはなるだろうが、そんなものは、重要ではない。 それなのに少なからぬ人々は、試験合格だの、資格取得だのといった矮小な物事に捉われ、事の本質を忘れ、結果として社会全体の学術技術水準が低下し、科学が衰退するのである。

そういう敵意をもって、過日、私は、日本専門医機構が発表した文書などを眺めていた。 すると、9 月 12 日付で発表された 専門医を目指す医学生・臨床研修医の皆様へ「平成30年度スタート予定の新しい専門医制度の開始に当たって」 という文章に、極めて不適切な表現を発見した。 「(2) 対象者」の「【注意】その他の医師について」という項目に、次のような記載があったのである。

現在すでに地域医療に従事している医師や、勤務場所や勤務時間に制約のかかることが予想される女性医師等については、別途学会に相談してください。 また、必要に応じて機構もご相談に応じます。

これを読んでピンと反応しない者は、差別主義者である。

「勤務場所や勤務時間に制約のかかることが予想される『女性医師等』」と、わざわざ「女性」と書いているのは、なぜなのか。 育児などに関係して時間短縮勤務などをするのは基本的に女性である、というような偏見があるのではないか。 仮に、現時点で時間短縮勤務する人の多くが女性であったとしても、わざわざ、こうした場合に「女性」と限定する理由にはならない。 単に「医師等」とすれば良いものを「女性医師等」とするのは、心の底にある差別意識の表れなのである。

これに対し、「そんな揚げ足をとらなくても」などと日本専門医機構を擁護する者も、差別主義者である。 日頃から男女差別について一定の意識を抱いている者ならば、このような不用意な記載は、しない。 揚げ足をとられるということ自体が、この問題に対して無関心であることの証左なのである。


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