これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/11/15 北陸に骨を埋めるか

過日、ある 3 年目の医師から「あなたは、我が県に骨を埋めるつもりですか」と問われた。 つまり今後の進路として、北陸医大 (仮) の、いわゆる医局の中で生きて行くのか、それとも別の場所に移るつもりなのか、ということである。

北陸医大に着任して二年近くになる。 正直にいえば、もう嫌だ、他大学に移りたい、と思ったことは、一度や二度ではない。 新しいものを創ろうという気概を持ち、既存の枠組に捉われずに前へ進もうとする人々は、北陸医大にもいないわけではないが、あまりに少ないのではないか。 指導医の言うことを無批判に受け入れ、ガイドラインに盲従する人々が、多すぎはしないか。 名古屋大学にいた頃の私は「名大は腐っている」と憤慨していたが、今から振り返れば、名大は、相対的には高い水準にあったように思われる。

何にせよ、私は、一度は北陸医大から外に出る。 これは北陸医大に嫌気がさしたからではなく、京都大学時代に受けた教えに従うだけのことである。 その後、私は北陸医大に戻って来るのだろうか。

冒頭で述べた 3 年目の医師に対し、私は「それは、北陸医大次第です。相応のポストを提供してくれるなら、戻って来ますよ。」と答えた。 しかし、この言葉には若干の嘘が含まれている。

現在の北陸医大には impact factor の信者が少なくないようである。 この impact factor の誤った用法により人事を左右することには、無論、重大な問題がある。 政治力を駆使して gift authorship を獲得し、 あるいは杜撰な統計解析により「成果」を挙げたかのようにみせかける、科学的意義の乏しい論文を乱発した者が重職に選ばれやすくなるからである。 そういう連中を厚遇するような人事を続け、科学者としても教育者としても資質を欠く者が教授の椅子を占めるようになった大学は、やがて滅びること必定である。 もし十年、十五年後に北陸医大がそういう風潮を残しているようであるならば、私は、たとえ教授の席が用意されようとも、この大学には帰還するまい。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional