これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/11/06 ビリヤーニ

医学と何の関係もないことを書く。インド料理についてである。

私は、しばしば、インド料理店に行く。 名古屋大学時代には、鶴舞キャンパスのすぐ西側にある「ムガルパレス」というインド料理店に入り浸っており、多い時には週に 3 回以上は足を運んでいた。 時に、こうしたインド料理店のことを「カレー屋さん」と呼ぶ者がいるが、正しくない。 というのも、インド料理はカレーばかりではないからである。

本格派インド料理店であれば、カレーの他に、ビリヤーニと呼ばれるインド風ピラフや、サモサと呼ばれる包み揚げなどがメニューに掲載されているはずである。 私自身のことでいえば、このサモサには思い入れが強い。 京都大学二年生の時、初めて一人で海外旅行に行った先のアラブ首長国連邦でのことである。 飛行機がドバイの空港に着いたのは未明であったので、私は朝まで空港で待機した。 その時、最初に現地で食べたのがサモサだったのである。 サモサは、本来はインドの軽食であるが、インド洋とアラビア海を隔てたアラブ首長国連邦でも、好んで食べられているようである。 もちろん、このサモサは美味であった。 そんなわけで私は、初めて行くインド料理店では必ずサモサの有無を確認し、あれば、それを注文することにしている。

サモサ大好き、などという日本人は少ないであろうが、ビリヤーニについては濃厚なファンが存在する。 詳しいことはビリヤニ太郎氏が書いている通り、 ビリヤーニをメニューに掲載しているインド料理店であっても、必ずしも本格的なビリヤーニを出すとは限らない。 本来のビリヤーニは、インディカ米をスパイスで炒めたものであるが、少なからぬ在日インド料理店では、ジャポニカ米を炊いたものをビリヤーニとして供する。 これはこれで美味であることも少なくないが、本来のビリヤーニとは、だいぶ異なる。 さらにいえば、インドでは鶏肉や野菜のビリヤーニも食べられるが、羊肉、つまりマトンのビリヤーニが人気である。 ところが羊肉は日本人にはなじみが薄いせいか、チキンビリヤーニは供してもマトンビリヤーニは出さない、などというインド料理店も存在するのは遺憾である。 もちろん、上述の「ムガルパレス」では、上等なマトンビリヤーニも、サモサも、食べることができる。

過日、富山駅近くのサガールという店に入った。以前はシターラという名であったらしい。 ここにインド料理店があることは、初めて富山を訪れた 6 年前から知っていたが、ディナータイムに入店したのは今回が初めてである。 もちろん、私はマトンビリヤーニとサモサを食べた。たいへん、結構であった。

この店の特徴は、ビーフカレーを提供していることである。 言うまでもなく、インド人の大半を占めるヒンドゥー教徒は牛を母の如く崇めているから、その肉を食べるなどというおぞましいことは、しない。 当然、大抵のインド料理店では、ビーフカレーなどはメニューに掲載していない。 いわゆるインド料理店の中にはネパール系の店も多く、時に「インド・ネパール料理」などと表示している店もあるが、ヒンドゥー教徒が多いことではネパール人も変わりない。

では、このサガールは似非インド料理、インチキなのかというと、そうではない。 よくみると「100 % ハラール」という表示がある。 店員も「al-salam `alaikum」と、アラビア語の挨拶をしている。この挨拶は、アラブ人だけでなく、非アラブのイスラム教徒も使う。 すなわち、この店は、日本でも珍しいイスラム系インド料理店なのである。 だから、ビーフカレーを提供することには何の不思議もないし、逆に、ポークカレーなどというものは出されない。

諸君も、初めて入るインド料理店では「マトンビリヤーニとサモサ」を注文すると良い。 店員からの「こやつ、できるな」という視線を感じることであろう。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional