これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2018/03/01 女性研究者優先

我が北陸医大 (仮) には、男女共同参画推進室という部署がある。 これは女性研究者の支援・育成を目的として設置されたものであり、そのための活動を積極的に行っている。 北陸医大では、教員全体に占める女性割合が 20% に満たず、教授にいたっては 12% 程度と、非常に女性が少ないことが背景にある。 欧米との比較で考えれば、女性研究者が少ないのは、男女の生物学的差異によるものではなく、主として社会的要因によると考えるのが自然である。

女性教員が少ない原因の一つに、採用時の不当な男女差別が存在する可能性はあるが、基本的には、能力の高い女性研究者が比較的少ないことが主因であろう。 これは、教育の機会が暗黙のうちに奪われていることが問題であるように思われる、ということは過去に何度も書いた。 そこで女性研究者の育成・支援に公的に力を注ぐことは適切である。

ただし、力の入れ方を間違えては、ならぬ。 北陸医大男女共同参画推進室主催の「英語スキルアップ・セミナー」の掲示をみて、私は憤慨した。 この会には定員が設定されており、先着順ではあるが、「女性研究者優先」という但書が付されていたのである。

主催者の意図は、理解できる。 あくまで女性研究者を育成することが目的のセミナーなのだから、女性を優先したい、ということであろう。 しかしセミナーの内容自体は、英語論文の書き方などを説くものであって、女性に特有の問題を扱うわけではない。男性研究者にも同様に役立つセミナーなのである。 それを女性優先で催すことは、それこそ、不当な男女差別ではないのか。

「女性研究者は様々な面で不利益を被っているのが現状なのだから、こういう場では優遇されても良いではないか」と言う者もいるであろう。 しかし、それは違う。 そういう、必然性のない優遇によって「バランス」と取ると、それに対する反動として、現存する、女性に対する不当に不利益な処遇が固定化されてしまうのである。

我々は、「女性は出産や育児によって離職・休職するから、昇進で多少は不利な扱いを受けてもやむをえない」というような野蛮な考えを認めない。 そのために「男女は同等に取り扱われるべきである」という態度をとっている。 それならば、どうして、「バランス」を取るために、セミナーを女性優先で開催しようなどという発想が生じるのか。

だいたい、私は、この男女共同参画室の「室長挨拶」も気に入らない。 「女性研究者が、そのキャリアを磨く時期は、同時に、子どもを産み育てる大切な時期でもあります。」という文言が含まれているからである。 女性研究者が子供を産むのは、自然なことである。生物学的な制約として、子供を産むのは通常は女性であって、男性が出産することは極めて稀だからである。 しかし子供を育てるのは、「女性の仕事」ではない。 男性研究者にとっても、そのキャリアを磨く時期は、同時に、子供を育てる大切な時期ではないか。

男女共同参画推進室が、このような不当な男女差別を推進しているようでは、我が大学における女子教育が改善されるはずがない。


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