これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2018/03/27 「神童は大人になってどうなったのか?」

週刊文春、という雑誌がある。 あまり読まないのでよく知らないが、たぶん、知性的な内容というよりは、大衆の好奇心に迎合し、低俗な内容を専らに扱う週刊誌である、と私は認識している。 が、その切れ味は鋭く、「文春砲」という言葉まで生み出されたほどである。 その文春のオンライン版は、まぁ、娯楽雑誌としては、 週刊 The New England Journal of Medicine ほどではないにせよ、面白い。

文春オンラインで、「神童は大人になってどうなったのか?」という特集が組まれたようである。 「神童」は言い過ぎであるが、要するに名門とされる中学・高校の出身者たちの「その後」を報じたものである。 我が麻布中学・高校もその対象となったが、なかなか、悪くない書き方である。 タイトルは「大人になっても反抗期が続く『麻布高校』の神童 --- 60 年以上、東大合格者ランキングで上位 10 校以内をキープ」とある。

東京大学への進学者を養成することは我が母校の目指す所ではないから「東大合格者ランキング」は余計であるが、 「大人になっても反抗期」を読んでニヤリとした卒業生は、多いであろう。むろん、私も、その一人である。

記事の冒頭には

政治家や官僚となれば、国家を支える、体制に従うことが職責のはずなのに、理不尽さを強いられたらとてもがまんできない。 信念を曲げられたら許しがたい。
これが麻布高校出身者の気質なのかもしれない。

とあり、政府や体制に安易に迎合しない政治家連中について記している。 開成を特集した回で「開成のアイデンティティは『現体制を守り抜く』」とあるのとは対照的である。

かつて私は、麻布卒の政治家には自民党に属する者が多いことについて、体制に迎合する低俗な連中だ、などと思っていた。 が、彼らの多くは、政府中枢に近づくために敢えて腰を屈して自民党に属したものの、その主流に安易には乗らず、戦い続けている者も多い。 そういう意味では、悪くない。

私も、工学の世界から落ちこぼれ、医学に流れたとはいえ、医師免許の上に胡坐して安寧を貪る医師の仲間入りはしていないつもりである。 むしろ、この腐った日本の医学・医療の体制を内側から食い破るために、 「医学を知らない素人が、何を言うか」といって外部からの批判を封じようとする邪な連中を抑え込むために、ここに来たのである。 その意味において、文春に取り上げられた官僚達と、根本的には似たようなものであろう。

京都大学時代、ビラ配りやデモに熱を上げ、授業に出ず、学業を疎かにし、留年を繰り返す一部の学生について、私は快く思っていなかった。 そんな方法で日本が変わるのか。ビラ配りなど、誰でもできることではないか。 むしろ、しっかりと勉強して、たとえば官僚になって、それで政治の姿を変えていくことこそが、京都大学の学生に求められる戦い方ではないのか。

そういう観点からいえば、麻布の連中は、なかなか良い戦い方をしている。


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