これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2018/01/12 対案を出せ

「反対するなら対案を出せ」というようなことを言う人は、少なくない。 詳しくは調べていないが、この種の言葉は、ドイツのアドルフだとか、英国の「鉄の女」だとかいった連中が、剛腕で敵対勢力を捻じ伏せるために好んだという。 冷静に考えれば、皆が納得できるような政策を立案するのが政治家や首相の仕事なのだから、この論理は、おかしい。 もしサッチャーが「反対するなら対案を出せ」と言ったなら、我々は「まともな案を出せないなら辞職しろ、私が代わりにやってやる」とでも言えば良い。

医療の世界でも同様である。 医師の過重労働について「でも、患者がいるのだから、診なければならない」「医者が足りないのだから、仕方ない」などと述べて、 不法な時間外労働を正当化しようとする勢力が存在する。 それに対して「不法なものは、やめなければならない」と指摘すれと、彼らは「それで、どうやって臨床をまわせというのか」と反論するのである。

それを考えるのは、我々の仕事ではない。 それを何とかするために、病院長をはじめとした病院執行部が存在するのである。 だから我々は、対案を出す必要はなく、不法なものを不法であると指摘するだけで十分なのである。

とはいえ、対案を出せるなら、それに越したことはないだろう。それを述べる。

まず、私が病院長であったら、どうするか。 厚生労働省に対し、医師を増員するよう働きかけたとしても、実現するには時間がかかるであろう。 そこで私は、まず患者の数を減らすことを考える。 入院患者については、入院期間を短縮させる。 本当にどうしても入院しなければならない患者以外は、速やかに退院させる。 たとえば「グルココルチコイドを使っていて感染のリスクがあるから」などという理由での入院は、認めない。 感染してから入院させれば良い。 それでは患者の健康に害が及ぶ、などと主張する者がもしいるならば、そう考える根拠を示していただきたい。 また退院後の患者は、基本的には地域の開業医を受診してもらう。私の病院の外来に通院することは認めない。 どうしても通院したいという患者には、「紹介状なし受診」として、特別料金を払ってもらう。 入院する予定がない患者が外来に定期通院することも、もちろん、認めない。

この方針に従わない医師や診療科に対しては、病院経営を損ねるものとして、懲戒処分も辞さぬ構えで望む必要がある。 そうすれば、業務を大幅に減らすことができ、過重労働などしなくても臨床はまわるはずである。

なお、以上の内容は、実は私が特別に考案したわけではない。 厚生労働省が推奨している内容そのままなのである。 私は、お上の方針を忠実に遂行する、と言っているだけである。

次に、私が厚生労働省であったなら、何はともあれ医師の数を大幅に増員する。 医師が職にあぶれるぐらいに、増員する。 医師国家試験の受験資格を医学科卒業者に限定せず、広く「修士課程修了程度」ぐらいに設定してしまうと良いだろう。 医師国家試験の内容も、もう少しまともな形に変更した方が良いであろうが、それは急がなくて良かろう。

この案に対して、少なからぬ医者は「医師の質が下がる」と言うであろうが、そんなことはない。 どうせ、現状、医者の多くは大した学識もなく、ろくに頭も使わない仕事しかしていないのである。 医学科で学んだことなど、ほとんど覚えていないであろう。 むしろ工学部を出て大学院を経験した連中などの方が、ずっと良い医者になるのではないか。 そうやって医者の数が増えれば、医者が余るようになり、安い給料でたくさんの医者を雇えるようになる。 過重労働の問題は、一気に解決する。

2018.01.17 脱字修正

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