これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2018/01/03 責任の所在

昨日の記事に対し、ひょっとすると、意識の高い看護師の中には反発する人もいるかもしれない。 我々だってプロであり、責任感を持って職務を遂行しているのだから、看護師に責任がないとは心外だ、という具合である。

看護師が高度な専門職なのは事実であって、それ故に、給与も高い。 しかし、それは世間の標準と比較した場合であって、失礼ながら、臨床医からすれば看護師というのは低賃金労働である。 実際、臨床医は、看護師の概ね 2 倍から 3 倍の給与を得ているのである。 なぜ、それだけの賃金格差があるのか。

言うまでもなく、臨床医の賃金が高いのは、某業界団体が政治団体を組織し、多額の政治献金を行うことによって、自分達に有利な政策を誘導しているからである。 平たくいえば、贈賄によって「望ましい」医療政策を実現しているわけである。

医師の中には「高度な技能職なのだから高賃金は当然だ」というようなことを言う者もいるが、最先端の科学者や技術者が冷遇されている日本の現状をみれば、それは的外れである。

また「仕事がキツいことを思えば給料は安い」などと妄言を口にする医者もいるが、 むしろ夜勤を含む不規則勤務を遂行し、患者を傍で支え続ける看護師の方が、身体的にも精神的にもキツかろう。 さらにいえば、医師は自分の判断と裁量で動ける範囲が広いが、看護師は基本的には医師の指示に従って診療を補助する立場に過ぎず、裁量が乏しい点も精神的に厳しい。

私は大学院を中退した時、実は進路として看護師も考えたことがある。 過日、そのことをある看護師に言ったところ「血迷いましたね」と笑われた。 あなたに務まるわけがないでしょう、という意味である。私も、そう思う。 私なら臨床医にはなれるかもしれないが、看護師のようなキツい仕事が務まるはずがない。それどころか、看護実習の段階で、泣いて逃げ出すであろう。

結局、実態はともかく建前としては、医師の高給は、その責任に対する報酬なのである。 誤った輸血について、看護師にも責任がある、などと言うぐらいなら、医師は給与の半分を返還すべきである。


戻る
Copyright (c) Francesco
Valid HTML 4.01 Transitional