これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。
いわゆる「ふるさと納税」の制度についてである。 これは、「住民税を任意の自治体に納めることができる制度」などのように表現されることもあるが、基本的には寄付金控除の一形態である。 制度の趣旨としては、是非はともかく、地方の活性化などを目的とするものであった。 しかし実態としては、高価な「返礼品」を目的とした「寄付」が横行していることは周知の通りである。
たとえば 10 万円の寄付をして、3 万円相当の「返礼品」が贈られるならば、正味の寄付額は 7 万円とみるべきであろう。 それならば、この場合、所得税や住民税から控除される額は 7 万円を上限とするべきである。 それなのに、現行制度では 9 万 8 千円が控除されるので、結果として「2 千円を払うと 3 万円相当の返礼品が貰える」という、おかしな状況になっている。 結果として、郷土愛などとは無関係な「ふるさと納税」が、盛んに行われているのである。 むろん、差額の 2 万 8 千円は、結局のところ、国庫や、その納税者の居住自治体の予算で負担されるのであって、天から降ってくるわけではない。 日本全体でみれば、公共の予算を逼迫するだけの制度であって、その支出は増税で賄わざるを得ない。 そういう制度なのである。
なお、形式的には寄付金控除であることから、高額納税者ほど「ふるさと納税」で多量の返礼品を獲得でき、大きな恩恵を受けることができる。 累進課税の理念に逆行するものといえよう。
さて、臨床医というのは、大抵、金持ちである。 「ふるさと納税」の恩恵を受けやすい立場なのであって、実際、 臨床医同士の雑談で「ふるさと納税」を「やらねば損だ」「すごく得する」などと話している場に、何度も遭遇したことがある。
それが、寄付というものなのか。