これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/12/16 ダウン症候群を理由とした堕胎

過日、テレビドラマ「コウノドリ」をみた。 出生前診断にダウン症候群と診断された胎児について、生むか、中絶するか、というようなテーマを扱うものであった。 たいへん、不満であった。

3 年ほど前に書いた通り、日本国において、胎児がダウン症候群であることを理由として堕胎することは違法である。 現状では、母体保護法の曖昧な規定のために、その違法性を刑事的に立証することが困難であるがゆえに、司法が黙認しているに過ぎない。 従って、出生前診断にあたっては、事前に遺伝カウンセリングを行うのが当然ではあるが、 その際に「異常がみつかれば中絶する」という選択肢を提示することは、できないはずである。 ところが日本の医者には、自分達が法律よりエラいと思っている連中が少なくないから、 平然と「中絶するという選択肢」を示す医者がいるらしい。

この「染色体異常を理由とする堕胎は違法である」という点について、「コウノドリ」の作中では、問題にされていなかった。 まるで、この堕胎は法的には問題なく、純粋に倫理的な問題であるかのような扱いだったのである。 犯罪を促すような作品である、といわざるを得ない。

なお、これも 3 年前の記事で書いたが、私自身は「生命を選択する権利」が両親には与えられるべきだと思っている。 「まるでダウン症候群の子供は生まれてはいけないと言っているようだ」などと感情に訴える者もいるが、それは被害妄想である。 生まれても良いが、生まれることは胎児が持つ当然の権利とまではいえない、というだけのことである。 その決定権は両親のみが持ち、両親の価値基準に従って行われるのであって、社会としての価値判断ではない。

だから、私は、そういう堕胎が不道徳であるとは思わない。 しかし、法律で禁止されているのだから、現在の日本において、そういう堕胎は行ってはならない。


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