これは http://mitochondrion.jp/ に掲載している「医学日記」を、諸般の便宜のために、 1 記事 1 ファイルとして形成し直したものです。 簡単なプログラムで自動生成しているので、体裁の乱れなどが一部にあるかと思われますが、ご容赦ください。


2017/12/07 エルサレム問題と千島列島

本記事には重大で恥ずかしい誤りが一カ所、ある。12 月 13 日の記事を参照されたい。

甲状腺機能低下症の話の続きより先に、エルサレムについて書こう。医学の話ではない。

報道によると、米国は 12 月 5 日、エルサレムをイスラエルの首都と認める旨を非公式ながら表明したらしい。 本件について、朝日新聞産経新聞などは、 パレスチナ政府が東エルサレムを「将来の首都」としている点を挙げ、紛争を激化させる動きとして報じている。 おそらく、歴史と政治に無知で無関心な若い記者が書いたのであろう。

現在イスラエルと称する集団は、1947 年の国際連合総会決議に基づいて「建国」されたものであるが、 これが国連憲章に反し、国家主権を踏みにじる不当な決議であることは 3 年ほど前に書いた。 しかも、この国連決議においてですら、エルサレムはイスラエル領に含まれていない。 エルサレムをイスラエル領とみなす根拠も、ましてや首都と認める根拠も、存在しないのである。

現在は東エルサレムがヨルダンの、西エルサレムがイスラエルと称する武装集団の支配下に置かれているのは事実である。 これは第一次中東戦争の停戦ラインであって、ヨルダンとイスラエルの間の平和条約で認められたものであるが、あくまで停戦ラインであって、国境ではない。

第二次世界大戦以降、武力を背景とする領土拡大は認めない、というのが国際的な合意となっている。 ロシアがクリミアの自国への編入を宣言した時でさえ 「クリミア自治共和国が自主的にウクライナからの離脱およびロシアへの帰属を決定した」という形にしなければならなかった。 むろん、この「自主的な決定」はロシアによるクリミア占領下で行われたものであって、ウクライナ憲法に反しており、国際的には無効とみなされている。

日本の例でいえば、竹島は韓国による占領下にあるが、あくまで日本領である。

千島列島の問題は、さらに複雑である。 サンフランシスコ条約では日本による千島列島の領有放棄が明記されているが、 ソ連は同条約に不参加であるから、この条約を根拠にロシアが領有権を主張することはできない。 すると、千島の帰属を規定するのは千島樺太交換条約ということになり、日本共産党が主張する通り、千島列島全体が日本領と考えるべきである。 なお、いわゆる北方領土、すなわち択捉、国後、歯舞、色丹のみについて領有権を主張するのは、筋が通らない。 以上のことから、理屈としては千島列島全体が日本領のはずであったのだが、日ソ共同宣言で歯舞、色丹のみを日本に引き渡す、として合意してしまった。 こうなると、日本が千島列島、あるいは択捉や国後の領有権を主張することはできない。 千島列島について特には宣言文に記載されていない以上、「まずは歯舞、色丹を返還して、千島列島はその後に交渉しましょう」などという勝手な理屈は、認められないのである。 このように、択捉、国後を含め千島列島について日本が領有権を主張することは難しいのだが、 ロシアの占領下にある、という事実自体は、この列島がロシア領であるとする根拠にならない点に注意を要する。

繰り返すが、武力による占領地は、領土ではない。 仮にイスラエルなる国家の存在を認めるとしても、少なくともエルサレムはイスラエル領ではないのである。 それを指摘しない朝日新聞や産経新聞の記者連中は、不勉強が過ぎる。

2017.12.07 誤字修正、語句修正

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